宮司の6割超が年収300万円未満...コンビニより多い神社の持続可能性を問う
得られた利益の「正しい使い道」
神社の場合ならば、宗教活動と関係ない事業で儲けようとしたり、「御神徳がある」といってお守りやご祈祷に高額な初穂料を支払わせたりしては本末転倒です。簡単に言えば、神様から見られて恥ずかしい利益の上げ方はできません。
そして、得た利益は理念を達成するために使います。神社であれば、先ほども述べたように、まずは神様のため、境内の環境を整えるために投資します。
当社は、デザイナーズお守り袋や期間限定の御朱印といった新しい授与品をつくったり、SNSを活用したりするなかで、参拝者とともに利益も徐々に増やすことができました。
その増えた利益は令和元年(2019)の「奉祝記念事業」など、境内の整備のほか、神様に奉仕する職員の教育などに活用しています。さらに、金魚ねぶた献灯祭や御仮屋お茶会、八甲田山の祠の再建プロジェクトなど、地域の文化や歴史を守る取り組みにも資金を投入しました。
利益は目的ではなく、理念を実現するための手段なのです。
渋沢栄一も「道義と算盤の両立」を説いた
このように、理念のもと、神様に喜んでいただくために、あるいは地域社会に貢献するためにお金を使っていけば、神社の雰囲気がよくなり、新聞やネットニュース、一般の方々のSNSで取り上げられる機会も増えます。
それが新しい参拝者を呼び、利益が増え、神様や社会に還元できる、というよい循環が生まれるのです。
これは一般企業に置き換えても同じことが言えます。得た利益を理念に基づいて正しく使えば、必ず新たな利益となって返ってくるものです。
ちなみに、日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一も、『論語と算盤』のなかで、道徳と経済の合致説を説きました。簡単に言えば、「商売においては道義(論語)と算盤(利益)の両立が大切で、道義を伴った利益を追求することで、企業も会社も豊かになる」としています。
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