宮司の6割超が年収300万円未満...コンビニより多い神社の持続可能性を問う
1000円に値上げした時にやったこと
神社経営は単なる商売ではありません。神様に奉仕し、神様と参拝者の仲立ちをする「なかとりもち」が本業です。経営を成り立たせるには、その本業を通して、神社や神様のファンを増やしていく必要があります。
授与品やご祈祷の意味や価値を、参拝者に正しく理解してもらうのも私たちの務めなのです。
廣田神社の場合は10年ほど前から、初穂料を1000円ほどに金額を上げたうえで、金額以上の価値があると感じてもらえるよう、お守りをより丁寧に取り扱うようにしました。
宝飾店を思い浮かべてもらえるとわかりやすいでしょう。ジュエリーや時計はガラスケースに入れられ簡単には触れられません。取り出すときには素手でなく手袋をはめて、トレイに載せられます。このように丁寧に扱われる品に対して、人は高い価値を感じるものです。
そこで当社では、参拝者が自由にさわれないようにお守りの見本をガラスケースに入れて展示しています。また、授与する際には、手渡しではなく、折敷(おしき)という神事に使われる角盆に載せてお渡ししています。
このほか、グラフィックデザイナーさんがデザインしたお守り袋をつくって、もち歩きたいと思ってもらえるような工夫もしています。
「お値段以上」と感じてもらえている
ご祈祷に関しても、初穂料5000円の神社がほとんどでしたが、当社では1万円にして、その分、丁寧に儀式を執り行うよう、職員全員に徹底しています。
お辞儀の角度や歩くスピードなど、決められた作法を折り目正しく行うのが基本で、神職全員で行う朝のご祈祷(朝拝)のとき、所作が乱れているところがあれば、お互いに指摘するようにしています。
作法ひとつひとつを丁寧に行うことで、ご祈祷を受けるみなさんにもその緊張感が伝わるので、より厳かな気持ちで儀式に臨んでいただけるようになったと思います。その証として、1万円以上お包みされる方も多数いらっしゃいます。
神様とのつながりを感じられる品や儀式には、他のものには代えがたい価値があるはずです。参拝してくださる方々にその価値をどのように伝えるのか、それが神職の頭の使いどころであり、重要な役割なのです。