最新記事
ビジネス

なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分から15分にまで短縮できたのか

2025年3月27日(木)17時00分
川原洋一(ANAビジネスソリューション講師)

最大50分のお待たせ時間を15分まで縮小

また、お預かりできないお荷物や危険物などのチェックは並んでいる間にお客様ご自身で確認いただけるよう、搭乗ルールが記載されたファイルをスタッフが持ち、並ばれている間に案内をすることにしました。

カフェなどで並んでいると、スタッフの方がメニューを持ってきてくれることがありますよね。並んでいる間にメニューが見られると、お客様も時間の節約ができて便利です。

手荷物カウンターでも、列に並んでいるお客様にご案内をすることにより、手荷物カウンターでスムーズに荷物をお預けいただけるようになりました。

このようにカイゼンを進めた結果、最大50分かかっていたお待たせ時間を半年で15分にまで短縮することに成功しました。ANA大阪空港株式会社の旅客サービス部はこれに満足することなく、さらに7分削減して「最大お待たせ時間を8分以内に!」という目標を掲げ、さらなるカイゼンに取り組みました。

このカイゼン事例で非常に役に立ったのが「5S」です。5Sを徹底して取り入れることで、ムダを取り除くというアプローチを行いました。ムダを減らすことにより、すべての動作を価値を生み出す動作に変え、結果的にカイゼンのゴールである「高い品質・高い生産性」を実現しています。

その後、大阪空港では、ターミナル改修にともない新しい手荷物受託の機器ABD(ANA Baggage Drop)を導入するなど、当時と環境が大きく変化しました。待ち時間の短縮の観点では間違いなく、お待たせ時間は短くなりました。都度の状況に合わせた体制を変更するなど、さまざまな取り組みを現在も続けています。

ANAのカイゼン
ANAのカイゼン
 川原洋一 著
 かんき出版

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

川原洋一(かわはら・よういち)
1985年ANA入社。整備本部企画チーム・マネジャー、機装センター業務推進室長、装備品整備部長、部品事業室長などを経て、2018年にKAIZENイノベーション推進室長に就任。デジタルの力を活用したKAIZENにおいては、「人がやるべきことに集中できる環境づくり」を目指し、未来の整備士像について積極的に変化することを求める議論を続けた。2022年にANAを退職し、現在はANAビジネスソリューションで講師として「ヒューマンエラーを起こしても事故にならない仕組みづくり」「安全をつくる取り組み」などについて研修や講演を行っている。

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル指数下落、雇用統計は強弱混合 失

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、経済指標を精査 エ

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中