最新記事
海外ノンフィクションの世界

夫婦間の不仲から米社会の分断まで...「不健全な対立」を「健全」に変える2つの方法

2024年11月19日(火)10時55分
岩田佳代子 ※編集・企画:トランネット

そうやって健全な対立に変えていけば、互いに切磋琢磨し合いながら成長し、よりよい人間となっていけるだろう。大事なのは、他者を思いやること。しかしこれは、簡単なようで一番難しいことかもしれない。

身につまされる「バカ運転手反射」行為の危険性

本書の魅力は、とにかく具体例が豊富なことだ。しかも、成功例はもとより、失敗例も、そこからいかにして軌道修正していくかも記してある。

南米コロンビアのゲリラ戦を背景にした対立から、ギャング間の対立、地方政治における対立など、さまざまな対立を実際に経験してきた当事者への著者渾身の取材活動によって、その悲喜こもごもの生の声が綴られている。

元米国大統領アダムズとジェファーソンの対立や、ニクソン元大統領の娘二人の対立など、読み物としての面白さもある。

身につまされる人が多いのは、著者のリプリーの言う「バカ運転手反射」という対立だろう。自分のことは棚に上げ、他者が信号無視をすると反射的に、その人には道徳的欠陥があると決めてかかる。そんな経験はないだろうか。

もちろん信号無視はいけないことだが、体調が悪いなどの避けがたい理由があったかもしれないのに、そういう可能性は一切考えず、その人の人間性を一方的に断じてしまう。

だが本書を読めば、こうした行為の危険性を理解し、気づかないうちに不健全な対立に陥ってしまうことも避けられるようになっていくだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中