最新記事
経営者

なぜ、アイリスオーヤマは「ピンチ」のときにこそ業績が飛躍的に伸びるのか?

2024年8月27日(火)19時16分
flier編集部

多くの企業は、競争優位の戦略に立ち、目の前の得意先や取引先のニーズに応えようとする「マーケットイン」の発想で戦っています。これでは競合他社との横並びにすぎず、既存のマーケットだけで競争していると薄利多売になってしまう。

一方、アイリスオーヤマが経営の軸に据えるのは、生活消費者の目線で需要を創造する「ユーザーイン」。変化に対応し、「いかなる環境においても利益を出す仕組みをつくる」ためには、お客様から支持を受けないといけない──そう考えて選んだ戦略です。既存のマーケットで戦うのではなく、水産加工業にはじまり、農業、園芸によるガーデニング、ペット、透明な収納ケースと、次々に新しい市場を開拓していきました。


ただし、需要創造型の製品は過去の実績がないため、確実に売れるものを求める問屋は取り扱いに難色を示しました。そこで、問屋機能を包含した「メーカーベンダー」という業態を確立した。これが市場創造の仕組みです。

ピンチはビッグチャンス。ピンチに陥ると身構えるけれども、レッドオーシャンをブルーオーシャンに変えていけばいい。消費者の潜在ニーズを顕在化することがユーザーインの基本なんですね。そのためには、社員はアイリスオーヤマの仕組みをよく知っておかないといけない。だから本書は「社員に向けての指南書」の意味合いもあるのです。

いかに強みを活かして瞬発対応力を発揮できるか

──本書では、ユーザーインの発想を育む場がプレゼン会議だとありました。新たなアイデアを通過させるかどうか、どんな基準で判断を下すのでしょうか。

プレゼン会議は、毎週月曜に全部署の責任者が集まり、5~10分で社員が次々とプレゼンテーションをしていく開発会議です。当社の2万5000点の製品はすべてこの会議から生まれます。息子の大山晃弘に社長をバトンタッチしてからは、議長である彼の決裁で進みます。「わかった。OK!」と数分で即決という速さが、事業スピードに直結しているのです。

徹底しているのはユーザーインの目線でジャッジすること。提案した自分たちが本当にその製品をほしいかどうかを自問します。

ただし、完全なゼロイチはリスクのかたまりですから、アイリスオーヤマの強みを活かせるかどうかが大事な判断軸になっています。たとえば、東日本大震災で節電が必須になった際は、すでに中国の大連工場でLED照明を製造していたので、直ちに生産能力を従来の3倍まで引き上げるよう指示し、前年の3〜5倍の受注が可能になりました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中