最新記事
経営者

なぜ、アイリスオーヤマは「ピンチ」のときにこそ業績が飛躍的に伸びるのか?

2024年8月27日(火)19時16分
flier編集部

細々と複数の事業をやり、生活者のニーズが増えたときに生産を拡大する。これは「あらゆる設備の稼働率を7割以下にとどめる」というルールを徹底しているからこそ可能なこと。何かの需要が出現したら、予備スペースを活用してすぐさま増産ができるのです。

植物の茎は、地上では見えなくても、地中では芋のようにつながっています。他社は、効率優先で地面に見えている強い部分だけ残して、地中の茎を切ってしまっているのでしょう。一方、アイリスオーヤマでは、将来を見据えて地中の茎を大事に育てています。


大事なのは、いかに強みを活かして瞬発対応力を発揮できるか。強みを持つマーケットの変化を有機的に結びつけることが、トップの仕事だと考えています。

──アイリスオーヤマは「ビッグチェンジにはビッグチャンスが到来する」という思想のもと、世のピンチのときこそ業績を伸ばしています。数々の実例のなかで、大山会長が特に印象に残っている事例は何でしょうか。

コロナショックでのマスク増産ですね。2020年1月に新型コロナウイルス感染症拡大の情報を聞いた瞬間、翌週から大増産に向けて工場増設すると決めた。事実、世界各国でマスクの需要が急拡大しました。

迅速な変化への対応を即断即決できたのは、ユーザのニーズにアンテナを張り続けているから。マスクは中国だけでなく、日本、アメリカ、ヨーロッパ、韓国でも製造しました。各国とも安心安全な自国生産を要望したためです。やはりコロナが収束すると需要が減り、リバウンドはきました。ですが、人々が困っているときは、そこに集中するのもユーザーインだと捉えています。

アイリスオーヤマの大山健太郎会長

最大の情報共有ツール「ICジャーナル」

──経営層だけでなく、従業員も一丸となって同じ方向へと動ける秘訣は何ですか。

1つは、アイリスオーヤマが非上場だから事業計画に縛られず、変化にすぐ対応できること。上場会社だと株主総会から直近の事業計画達成が求められるので、中長期の投資がしにくくなってしまう。

もう1つは、情報共有の仕組みです。上場会社なら、株価に影響のありそうな経営情報は一定の人を除いてクローズにしないといけない。ですが、当社は株価への影響を考えなくていいので、新規事業に関しても情報を隅々まで共有できるわけですね。

たとえば、情報共有ツール「ICジャーナル」では、営業や開発など各持ち場で得た情報を毎日入力します。これはただの日報ではありません。「私ならこう考える」「お客さんはこう求めているから、こうすべき」などと、考えや意見、提案まで書きます。これが、経営層と現場社員との情報格差をなくし、同じ情報をもとに同じ方向へ向かえるよう促してくれるのです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン主要濃縮施設の遠心分離機、「深刻な損傷」の公

ワールド

欧州委、米の10%関税受け入れ報道を一蹴 現段階で

ワールド

G7、移民密輸対策で制裁検討 犯罪者標的=草案文書

ワールド

トランプ氏「ロシアのG7除外は誤り」、中国参加にも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中