最新記事
教育

「能力の差」はもう重要ではない...AIが進化した今、社会と乖離してしまった「教育」はどうあるべきか?

2023年6月16日(金)17時32分
flier編集部

230614fl_unr03.jpg

孫泰蔵氏とflierの大賀康史CEO

ChatGPTはメリトクラシーを解放する「最終兵器」か?

大賀:AIの進化で、学びや仕事のあり方が問い直されていると捉えています。OpenAIによるChatGPT Plusがリリースされたとき、すぐに課金して、1週間ほどアイデア出しなどに使ってみました。すると想像以上のアウトプットが出てきた。

私はこれまでAIの仕組みを勉強してきたので、AIにできることがそこまで凄まじいものではないと理解しています。ただ、ChatGPT Plusに搭載されたGPT-4の進化は今後も止まらない。そうした少し先の未来が見えている人たちはみなどこか、人間にできる貢献とは何だろうかと、将来を憂えているように見えます。

孫:大規模言語モデルの進化は、これまでのAIの進化とは質的に違う、非連続的なものという印象がありますね。ChatGPTは、2022年11月にリリースされて、たった1か月で1億人ユーザーを獲得するという史上初の記録を打ち立てた。しかも強化学習により、1億人のフィードバックがどんどん反映され、開発者すら予想しきれないフェーズに突入している。ChatGPTが提示するのは、デジタル上の言語データをもとに「確率的に次はこんな内容がくる」という、いわば人類全体の平均的な言葉の使い方。それが、その道の専門家でも唸るほどのアウトプットなので、「はたして人間は思考しているのか?」という問いを突きつけられたわけです。自分ならではの意思や価値もパターン認識にすぎないのではないか、と。

大賀:未来について考えている人たちが悲観的になるのは、そうした理由があるからですね。

孫:そう、自分の好きなことですらパターン認識かもしれない。だからこそ、「自分が好きなことって何?」という問いに向き合うことがますます大事になると思います。

好きなことだけしていると食べていけない、堕落してしまう。こうした恐れを生み出す背景には資本主義があります。資本主義が生み出す労働者社会の負の側面ですね。でも、好きなことで生計をたてられないのは、ブレーキを踏みながら恐る恐るやっているから。突き抜けてみたら、むしろ資本主義が後押ししてくれる。だから僕は資本主義を否定してなくて、活かし方次第という考えです。資本主義の制度のもとでも、好きを追究していけると思います。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー軍事政権は暴力停止し、民政復帰への道筋示

ワールド

香港住宅価格、9月は1.3%上昇 心理改善で6カ月

ワールド

台湾外交部長、米国との関係は「非常に安定」 米中首

ビジネス

ノバルティスCEO、120億ドルの米バイオ企業買収
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中