最新記事
教育

「能力の差」はもう重要ではない...AIが進化した今、社会と乖離してしまった「教育」はどうあるべきか?

2023年6月16日(金)17時32分
flier編集部

大賀:なるほど。まさに『冒険の書』というタイトルの通りですね。この本には、AIの進化によって能力の差はそれほど重要でなくなっていくため、大人も子どもも能力信仰から離れて「好き」を追究するのがいい、という一本の筋が通っているのを感じます。ロックやルソー、親鸞など、世界の思想家や宗教家たちの系譜をたどるなかで、「100%そのとおり」と思いました。一方で、正直なところ「はたして自分はアンラーニングできるのだろうか?」と恐れも抱きました。それほど生産性や革新性を求める発想に染まってきたのでしょうね。

私自身は自分らしく生きる人が増えてほしいと願っています。ですが息子がゲームばかりしていると、宿題をしてから遊びなさいと言ってしまう。それに、会社のメンバーが好きなことだけをして成果が全く出ないとしたら問題だと思ってしまいます。好きなことをしながらも世の中をわたっていけるようにと、理想と現実とのはざまにいるんです。

230614fl_unr02.jpg

孫泰蔵氏(flier提供)

孫:僕も「好きなことだけやればいい」と書きながらも、それで失敗した人にダメージをくらうと、イラッとしていますからね(笑)。実際、この本を書くなかで、理想と現実の折り合いをどうつけるか葛藤して、幾度となく筆が止まりました。

大賀:今の社会で好きを追究していける人は、大谷翔平選手のように特別に秀でた才能を発揮しているごく一握りの人ではないか、とも思ってしまいます。残りの人はもっと多種多様な欲望を抱えていて、「好き」だけでやっていけないのではと思うのですが、泰蔵さんは後者の人たちにはどう声をかけますか。

孫:僕が願うのは、一握りの人ではなく、誰もが心の底から好きなことができる世の中です。好きなだけ寝たりYouTubeを見たりしてもいい。なぜなら人生100年時代なので、そのうち数年YouTubeを見ていたとしてもまた他のことをしたくなるだろうと思うんですよね。 仮に何年か「無駄」に過ごしても、そんなの長い人生の中では誤差じゃないかと(笑)。

「好きなことをしていると生計をたてられない」というのは、サラリーマン特有の防衛本能が働いているのかもしれません。けれど、実際にお金にならないことをしていても、複数の人にちょっとずつ依存しながら最小限の衣食住さえ確保すれば、実はだいたい何とかなるもんなんですよね。根拠のない防衛本能を乗り越えた世界に飛び込んでみたら、そこには解放された世界があります。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」

ビジネス

米国株式市場=反落、デルやエヌビディアなどAI関連

ワールド

米、パレスチナ当局者へのビザ発給拒否 国連総会出席
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中