最新記事

人材

日本企業の「人材を評価する」能力が低い訳...敏腕ヘッドハンターが教える「人を見る目」の鍛え方とは?

2023年5月18日(木)19時04分
flier編集部

大賀:フライヤーももちろん成長を急ぎたいですが、もし「優秀で有害な人」が入社しても、組織のカルチャーの自浄作用が働いて、組織に定着しないように思います。「優秀で有害な人」の助けを借りなくても、既存のメンバーの創意工夫によって、成長を最大化できるのではないかと考えています。

小野:そこは企業のビジネスモデルでカバーできるところでもあります。営業力に依存しない仕組みを作るとか、競争を挑むのではなく、自社独自の価値を提供するオンリーワン戦略をとるとか。

大賀:ここは経営者の美学にもよりますね。5年、10年と長いスパンでの組織としての最適解を探りたいところです。

ポテンシャルは後天的に伸ばせるのか?

大賀:ご著書の「人を4つの階層で捉えるフレームワーク」は、選ぶ会社側の目線だけでなく、選ばれる個人の目線でも興味深く、自身の人間性を高めていくうえでも重要なものだと思います。ポテンシャルを後天的に伸ばすことは可能ですか。

小野:ポテンシャルの大部分は5、6歳の頃に決まるので、後から伸ばすことは難しいという立場をとっています。ですが、意外に「自身のポテンシャルに気づけていない」「ポテンシャルがあるのに開花していない」というケースが多くあります。

1つめのケースは、正しい自己認識ができていないケースです。たとえば、他者から見ると、十分好奇心はあるのに、本人はそうでないと思い込んでいるとか。そうした誤解を解くことで、リミッターがはずれて本来のポテンシャルが活かせるようになります。

もう1つのケースは、ポテンシャルの開花のチャンスを得られていないケースです。たとえば、趣味ではアイディアに満ち溢れているのに、職場ではそういった創意工夫はむしろマイナスとなるようなケースです。環境がポテンシャルの発揮を阻害しているようなこともあるのです。

大賀:なるほど。個人としては、固定観念にとらわれず自分のポテンシャルを解放することが大事になる。それに対して組織の役割は、個々人のポテンシャルを開花させるような環境を整えることだと思いました。人の能力を伸ばすというとおこがましい感じもしますが、「その人本来のポテンシャルを発揮してもらう」と考えると自然にできそうですね。そうした環境整備のためにも、『人を選ぶ技術』を改めて振り返りたいと思います。


230511fl_tei03.jpg

小野壮彦(おの たけひこ)

グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター

起業家・ヘッドハンター・経営者メンター

1973年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、アクセンチュア戦略チームを経て、1999年にネットエイジの支援を受け、インターネット上の企業間仲介サービスを提供するプロトレードを創業。翌年楽天に買収され、三木谷社長の経営企画スタッフとして薫陶を受ける。ミラノ・ボッコーニ経営大学院にてMBAを取得し、31歳でJリーグ・ヴィッセル神戸の取締役事業本部長に就任。クラブ経営、チーム強化に従事する。その後プロ経営者を目指し、リヴァンプを経てベンチャー企業の役員を経験。コンサルタント、起業家の二面の経験を買われ、2008年、35歳で世界最高峰のエグゼクティブサーチファーム(ハイレベル経営層のヘッドハンター)であるエゴンゼンダー社に入社。ヘッドハンティング、アセスメント、コーチングを100社以上の企業、約5000人の経営人材へ実施。2016年同社の共同経営者(パートナー)に就任。2017年に前澤友作社長にスカウトされ、ZOZOに参画。本部長に就任。ZOZOスーツの立ち上げ、海外72か国へのグローバル展開を指揮。現在は日本最大級のベンチャーキャピタルファンドであるグロービス・キャピタル・パートナーズにて、組織グロースの支援、起業家メンタリングなどにあたりつつ、自身のスポーツマネジメント会社を経営中。

flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。

flier_logo_nwj01.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中