最新記事
銀行破綻

爆発に向けたカウントダウン──米銀行の連続破綻は必然だった

Inevitable Collapse

2023年5月11日(木)13時50分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)
ファースト・リパブリック銀行

ファースト・リパブリック銀行の株価は今年4カ月で97%下落していた HYUN JOO JINーREUTERS

<アメリカの銀行史上2番目の規模で破綻したファースト・リパブリック銀行の終焉は、いくつもの火種が爆発するカオスの中で起きた>

週末に考え抜いた末の決定だった。

米金融当局は5月1日の月曜日の早朝、経営不振に陥っていたファースト・リパブリック銀行(FRC)を公的管理下に置き、事業の大部分をJPモルガン・チェースに売却すると発表した。FRCの破綻は、アメリカの銀行破綻としては史上2番目の規模だ。

これがFRCだけの問題なのか、それとも米金融界全体の危機を意味しているのかは、これから熱い議論の的になるだろう。いま確かなのは今回の破綻が、米金融界でいくつもの火種が爆発して起きていたカオスの延長線上にあるということだ。

3月上旬、カリフォルニア州に拠点を置くシルバーゲート銀行が暗号資産(仮想通貨)の下落などで経営状態が悪化し事業を閉鎖。

続いてシリコンバレー銀行(SVB)が高金利に加え、スタートアップ企業やワイン産業への融資に偏った事業内容が原因で破綻した。米金融機関としては2008年の金融危機以降、最大の規模だった。

さらにその後、ニューヨークを拠点とするシグネチャー銀行が取り付け騒ぎにより破綻。米政府は3つの銀行全てを管理下に置く決定を下した。

FRB(米連邦準備理事会)や米連邦預金保険公社(FDIC)などが迅速に動き、これら全ての銀行の預金を全額保護すると発表したが、一連の騒動の余波はヨーロッパにまで到達。メガバンクのクレディ・スイスが経営不安に陥り、ライバル銀行に救済される羽目になった。

この余波の中で何とか持ちこたえていた中堅銀行のうち、最も打撃を受けていたのがFRCだ。SVBが破綻した翌週、FRCの株価は1日で62%下落し、過去10年で最低の水準を記録。その後、FRBや大手銀行が資金注入を行ったが、事態は悪化の一途をたどった。

預金1000億ドル流出

FRCの健全性がさらに不安視されるなかで、S&Pグローバルが3月15日、FRCの格付けをジャンク(投資不適格)級に引き下げた。同22日にはFRBが金利引き上げの継続を決め、FRCの立て直しは絶望的になった。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

NATO事務総長の戦争準備発言は「無責任」、ロシア

ワールド

米H─1Bビザの10万ドル申請料、差し止めへ20州

ビジネス

中国、消費喚起へビジネス・金融システムの連携強化求

ビジネス

大企業・製造業の業況判断DI、3期連続の改善=12
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中