最新記事
軍事

韓国、ウクライナ危機で武器需要高まるポーランドと約2兆円規模の大型提携 巨大軍産複合体目指す

2023年5月30日(火)20時15分
ロイター
K9自走榴弾砲

韓国は、同国史上最大となるポーランドとの137億ドルの武器契約を活用し、巨大軍産複合体の基礎を築こうとしている。写真は昌原市のハンファ・エアロスペース工場で製造されるK9自走榴弾砲。방위사업청 / YouTube

韓国は、同国史上最大となるポーランドとの137億ドル(約2兆円)の武器契約を活用し、巨大軍産複合体の基礎を築こうとしている。両国の軍需企業が期待するのは、遠い将来にわたって欧州の武器需要を満たすことだ。

韓国の国防省によると、同国の昨年の武器売却額は前年の72億5000万ドルから170億ドル以上に急増した。昨年は西側諸国がウクライナへの武器供与に奔走し、北朝鮮や南シナ海などでも緊張が高まったという背景がある。

韓国、りゅう弾砲シェアが68%に

北大西洋条約機構(NATO)の主要メンバーであるポーランドとの昨年の武器取引には、多連装ロケット砲「チョンム(Chunmoo)」、K2戦車、K9自走榴(りゅう)弾砲、FA―50戦闘機など併せて数百基・両が含まれていた。その金額と数は、世界屈指の防衛産業の中でも際立っていた。

韓国とポーランドの当局者らは、両国の提携はウクライナ戦争後も欧州の武器市場を制覇することにつながると言う。韓国が高品質の武器を他国より迅速に提供し、ポーランドが製造能力と欧州への販売パイプを提供する形だ。

ロイターは、この取引に直接関与した人々を含む企業幹部と政府関係者13人に話を聞いた。両国の提携は、国際的な官民パートナーシップとコンソーシアムを利用して韓国の輸出市場を広げ、世界屈指の武器供給国になる野望に向けた青写真になる、と関係者らは語った。

ポーランドとの取引に関わった韓国航空宇宙大手ハンファ・エアロスペースのオ・カイワン取締役は「チェコ、ルーマニア、スロバキア、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアなどは、防衛装備品を欧州だけから購入しようと考えていたが、今では韓国企業から低価格で購入でき、迅速に納入してもらえることが周知されている」と述べた。

韓国企業は、武器の単価を公表していない。

NHリサーチ&セキュリティーズの調査によると、ハンファ・エアロスペースは既に世界の榴弾砲市場で55%のシェアを握っており、ポーランドとの取引でこれが68%に拡大すると推計される。

ポーランド国営軍需グループPGZの輸出プロジェクト室長であるルカシュ・コモレク氏は、今回の提携によって韓国とポーランドの企業はコンソーシアムを組み、兵器の製造、戦闘機の保守、そして最終的に他の欧州諸国へ供給するための枠組みができると語った。

両国の関係者によれば、提携内容にはポーランドで韓国の武器をライセンス生産することも含まれる見通し。計画では、2026年から戦車820両のうち500両、榴弾砲672両のうち300両をポーランドの工場で製造する予定だ。

「われわれは、単に下請け、技術移転業者、購入元としての役割を果たすことを望んでいるのではない。シナジーを生み出すとともに、欧州市場を制覇するため、わが社の経験を生かすことができる」とコモレク氏は述べた。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪総選挙、与党が政権維持の公算 トランプ政策に懸念

ビジネス

三井物産、26年3月期純利益は14%減見込む 資源

ビジネス

25・26年度の成長率見通し下方修正、通商政策の不

ビジネス

午前のドルは143円半ばに上昇、日銀が金融政策の現
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中