最新記事
軍事

韓国、ウクライナ危機で武器需要高まるポーランドと約2兆円規模の大型提携 巨大軍産複合体目指す

2023年5月30日(火)20時15分
ロイター

英国に本社を置くエージェンシー・パートナーズの防衛・航空宇宙アナリスト、サシュ・トゥサ氏は、両国の長期的な計画には困難が伴うだろうと言う。政治情勢が変化し、榴弾砲や戦車の需要が減少する可能性もあるからだ。

トゥサ氏によると、生産と需要が維持できたとしても、欧州諸国はポーランドのように自ら韓国と提携することを望むかもしれない。共同生産合意を結べば、雇用創出と産業活性化につながるという。

4年で1両も納品しないドイツ、数カ月で34両納品した韓国

韓国の南海岸にあるハンファ・エアロスペースの工場では、巨大な自動化ロボット6台と生産労働者150人以上が、ポーランド向けに47トンのK9自走榴弾砲を製造している。

チャ・ヨンス製造部長は、需要に対応するため、50人程度の増員と生産ラインの増設を見込んでいると明かした。「基本的には、どんな注文にも応えられる」という。

ポーランド当局者らは、韓国がどの国よりも迅速な武器納入を提案したことが、選考の決め手になったと語る。K2(10両)とK9(24両)の初出荷分は、契約締結からわずか数カ月後の昨年12月にポーランドに到着し、その後、少なくとも戦車5両と榴弾砲12両が追加納入された。

これに対し、やはり武器製造大国であるドイツは、ハンガリーが2018年に発注した新型戦車レオパルト44両をまだ1両も納入していないと、ポーランド国際問題研究所のシニアアナリスト、オスカル・ピエトレビッチ氏は言う。

「この地域の主要な武器提供国であるドイツの生産能力が限られていることを考えると、韓国のオファーに対する各国の関心は、高まる一方かもしれない」と同氏は述べた。

韓国の武器産業の幹部らも、納入の迅速さが将来の顧客に対するセールスポイントになるだろうと述べている。

韓国の軍と軍需産業は密接な関係にあるため、国内の受注を調整して輸出用の生産能力を確保することができる、と関係者は言う。

欧州の防衛産業幹部は「韓国は、われわれが何年もかかるようなことを数週間から数カ月間でまとめてしまう」と語った。

航空機メーカー、韓国航空宇宙産業のグローバルビジネス&ストラテジー担当バイスプレジデントであるチョー・ウーラエ氏は、韓国は北朝鮮との緊張が絶えないため、軍事生産ラインは強いプレッシャーの下に稼働し続け、武器の開発、試験、アップグレードが繰り返されてきたと説明した。

韓国防衛事業庁(DAPA)のキム・ヒョン・チョル次長は、韓国はウクライナ戦争前からポーランドに武器を売り込んでいたが、ロシアの侵攻によってポーランドの関心が高まったと述べた。

韓国の武器が、米国やNATOのシステムと互換性を持たせる設計になっている点もセールスポイントだ。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、韓国はNATOとその加盟国に対する第3位の武器供給国であり、購入額の4.9%を占めている。

ただ、米国の65%、フランスの8.6%には遠く及ばない。

食と健康
「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社食サービス、利用拡大を支えるのは「シニア世代の活躍」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中