最新記事

経営

気を付けるべき12種類のハラスメント、うち法律で規制されているのは3種類

2022年8月31日(水)11時00分
伊藤将人 ※経営ノウハウの泉より転載

①ハラスメントを行ってはならないという会社の方針を明らかにし、それを周知・啓発する
②ハラスメントに関する相談や苦情に適切に対応するための体制を整える
③ハラスメント問題が発生したら、速やかに適切に対応する

これらの防止措置がなされていない場合には、都道府県労働局が会社に対して報告を求め、助言や指導、勧告を行うことで是正を図ります。また、会社が都道府県労働局の指導等に誠実に対応せず悪質だと判断された場合には、企業名が公表され会社の社会的な評価が失墜する結果となります。

被害者である従業員が第三者の力を借りて解決を図ろうとするケースもあります。具体的には、都道府県労働局による個別労働紛争解決制度を利用し、会社との解決を図る方法。また、加害者である従業員との解決を図ろうとする場合には、裁判をすることになります。裁判で、加害者である従業員の言動が不法行為である、会社に使用者責任があると判断された場合は、慰謝料や被害者が働けなくなった期間の賃金に相当する金額を支払わなくてはならない場合もあります。上記で紹介した、ハラスメントのない職場環境作りのための3つの措置は、会社の責任として必ず行う必要があります。

企業が実施すべきハラスメント対策

ハラスメント対策の法整備や社会の潮流から、ハラスメント問題を重要な経営課題と捉え、社内で定期的にハラスメント研修を実施する会社が増えています。ハラスメントのない職場作りのためには、従業員が正しい認識を持ち、ハラスメントの発生を未然に防ぐことが重要です。ハラスメントとはなにかを理解し、どのような言動がハラスメントに該当するのかといった法的な知識や、ハラスメントを防止するための心構えを身につけることを目的に研修を実施しましょう。研修方法は、講義形式による研修はもちろんですが、ケーススタディやロールプレイといったグループワークによって学習を進める方法もあります。会社や業種によってハラスメントにあたるか否かの明確な区別が付けづらいこともあるため、より理解を深める機会になるかもしれません。

最後に

最後に、ハラスメント対策は、会社ごとに独自の取り組みもさまざまです。厚生労働省の運営するポータルサイト「あかるい職場応援団」には、職場におけるパワーハラスメント事例や動画、研修情報などが掲載されており、非常に役立ちます。また、ダウンロードコーナーには職場内での啓発に役立つリーフレット、研修用資料、マニュアルなどが多数掲載されているので、是非一度参考にしてください。

今回は、会社で発生するハラスメントのリスクと原因、種類、対策方法について説明しました。会社全体で長期的な視点をもって、継続的にハラスメント対策を行っていくことが重要です。

【参考】
『職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)』/ 厚生労働省
『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)』/ e-Gov
『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)』/ e-Gov
『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)』/ e-Gov
『個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)』 / 厚生労働省
『あかるい職場応援団』/ 厚生労働省

2022.07.10

[執筆者]
伊藤将人
人事労務コンサルタント
ESコモンズ(有限会社人事・労務主宰) メンバー
埼玉県入間市出身。大学卒業後、社会保険労務士を取得。東京都内の社会保険労務士事務所で約3年間、HRテックを活用したバックオフィスDX化のコンサルティング経験を積む。その後、上場準備中(N-2)のベンチャー企業に参画し、上場審査に向けた労務管理体制の構築を行い、現在はベンチャー企業を中心に、バックオフィスDX化をメインとした人事労務コンサルタントとして独立。

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、豪首相と来週会談の可能性 AUKUS巡

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて

ビジネス

カナダCPI、8月は前年比1.9%上昇 利下げの見

ビジネス

米企業在庫7月は0.2%増、前月から伸び横ばい 売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中