最新記事

レアメタル

韓国、脱中国依存を進める 国内タングステン鉱山30年ぶりの再開へ

2022年5月14日(土)10時48分

コンサルタント会社ウッド・マッケンジーの金属・鉱業担当上級副社長ジュリアン・ケトル氏は「言わば、重要な鉱業原料のレストランで中国は既に席に座ってデザートを食べているのに対して、他の国はタクシーの中でメニューを読んでいるような状態だ」と話した。

欠かせぬプランB

サムスン電子のような半導体大手を抱える韓国にとって、レアアースの供給確保は焦眉の課題だ。韓国は国民1人当たりのタングステン消費量が世界で最も多いが、輸入の95%を中国に頼っている。

ロンドンに拠点を置き国際商品に関する分析を行っているCRUグループの見積もりでは、中国は世界のタングステン供給の80%余りを握っている。

上東鉱山はかつて3万人が暮らすにぎやかな町だったが、今では住民は1000人ほど。ただ、同鉱山のタングステン鉱床は世界最大級で、来年の生産量は世界供給の10%相当に達するとアルモンティ・コリア・タングステンは見込んでいる。

アルモンティ・コリアの親会社でカナダに拠点を置くアルモンティ・インダストリーズのルイス・ブラック最高経営責任者(CEO)は、生産の半分程度を韓国国内に振り向け、中国産に取って代わる計画だと述べた。「中国から買うのは簡単で、中国は韓国にとって最大の貿易相手国だが、中国に依存し過ぎていることは理解されている。今はプランBが必要だ」と指摘した。

上東鉱山のタングステンは、韓国が日本の植民地だった1916年に発見された。タングステンはかつて、強度の高さから金属掘削工具に多く使われた。韓国経済の屋台骨を支え、1960年代には韓国の輸出額の70%を占めた。

その後は、より価格の安い中国産に押され、採算が立たなくなった同鉱山は1994年に閉鎖へと追い込まれた。しかし、デジタル革命やグリーン革命、供給源の多様化を求める各国の思惑から、今後は需要と価格が上昇を続けるとアルモンティは見込んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中