最新記事

株の基礎知識

【インフレ時代の投資戦略】ウクライナ侵攻で原油高騰、株価はどうなる?

2022年3月15日(火)16時25分
山下耕太郎 ※かぶまどより転載

FRBや日銀などの中央銀行は、経済を成長させながら物価を安定させることを目的に金融政策を行っています。「物価の安定」とは、消費者物価指数の上昇率を年率2%に維持することです。これが大きく上昇した場合、景気の過熱を抑えて物価を安定させるため、金融引き締めが行われます。

金融引き締めが行われると、株価は一時的に下がる可能性があります。米国野村証券では、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の2倍に当たる0.50%の利上げを予想していますが、これは2000年5月以来の大幅利上げで、前回実施された際にはITバブルの崩壊につながりました。

インフレに強い銘柄は?

インフレ懸念による金利上昇局面では、ハイテク株などのグロース株(成長株)が売られる傾向にあります。

グロース株は株価収益率(PER=株価を1株あたり利益で割ったもの)が高く、その逆数である益利回り(1株あたり利益を株価で割ったもの)が低くなります。金利が上昇する局面では、その益利回りの低さが投資妙味を低下させるのです。

その一方で、PERが低く配当利回りの高いバリュー株(割安株)は買われやすくなります。バリュー株には、三井物産<8031>や住友商事<8053>などの商社株や、銀行や保険などの金融株があります。

また、アメリカやヨーロッパでは緩和縮小を急ぐ中央銀行が多いものの、日銀は金融緩和を継続させるとみられています。各国との長期金利の格差から円安が進みやすい環境にあり、自動車株などにも追い風になりそうです。

そして、インフレになると地価や家賃の上昇が期待できるので、インフレに強い資産として不動産に投資する不動産投資信託(J-REIT)にも注目が集まります。さらに、インフレになるとこも価格も上昇するので、金や原油に連動するETF(上場投資信託)にも投資妙味があります。

スタグフレーションに注意

株式はインフレに強い資産といわれますが、インフレが加速し、中央銀行による金融引き締めが行われると、一時的に株価が大きく下落することもあります。しかし、長期的な視点で見れば、株価が下落しているときは購入のチャンスでもあります。

ただし、これまで金融緩和時に買われていたIT株やハイテク株などのグロース株は金利上昇時に上がりにくい傾向にあるので、PERやPBR(株価純資産倍率)などが低いバリュー株のほか、インフレに強いREIT(不動産投資信託)やコモディティなどに対象資産を変えることも有効です。

ウクライナとロシアをめぐる状況も不安が尽きませんが、インフレと株価の関係をよく理解して、注意深く資産運用を行う必要があります。

[執筆者]
山下耕太郎(やました・こうたろう)
一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌

※当記事は「かぶまど」の提供記事です
kabumado_newlogo200-2021.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中