中国は金融緩和加速、米利上げによる資金流出にも配慮

中国人民銀行(中央銀行)は、減速が続く経済成長を支えるため一段の緩和措置を打ち出そうとしている。ただ大幅な利下げよりも、実体経済にもっと潤沢に資金を流し込む方式を選ぶ公算が大きい。自動車部品製造会社の延鋒安道の上海工場で2020年2月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)
中国人民銀行(中央銀行)は、減速が続く経済成長を支えるため一段の緩和措置を打ち出そうとしている。ただ大幅な利下げよりも、実体経済にもっと潤沢に資金を流し込む方式を選ぶ公算が大きい。政策決定の内幕を知る関係者やエコノミストは、こうした見方を示した。
経済活動がさらに鈍化する場合、多少の利下げは選択肢として残ってもおかしくないとの声が一部アナリストから聞かれるが、中国の政策担当者は米連邦準備理事会(FRB)が近く利上げを開始するとの観測が資金流出につながることを心配するだろう。
中国指導部は、経済てこ入れの強化を約束している。背景には、不動産市場の落ち込みが投資の足を引っ張り、新型コロナウイルスの感染防止対策として実施している厳しい規制措置が消費を抑制しているという事情がある。足元では新変異株オミクロン株の急速な拡大が新たな脅威となり、天津市で市民1400万人を対象にした大規模検査が行われるなど全土で規制がさらに厳格化。そのため何人かのエコノミストは、中国の今年の成長率予想を下方修正した。
こうした中、人民銀行の元金融政策委員で影響力の大きいエコノミストの余永定氏はロイターに「われわれは緩めの金融政策を必要としている。どの程度緩和するかは経済情勢次第だが、政策の方向性は明確だ」と語った。
内部関係者やエコノミストの見立てでは、人民銀行は数カ月中に銀行の準備率(RRR)をさらに引き下げ、銀行融資支援策や中期貸出ファシリティー(MLF)などを通じた量的緩和に動きそうだ。中小企業向けの支援拡大も見込まれる。
人民銀行は昨年12月15日にRRRを50ベーシスポイント(bp)引き下げ、同20日には最優遇貸出金利の指標であるローンプライムレート(LPR)の1年物を5bp下げている。
Zhixin Investmentのチーフエコノミスト、リャン・ピン氏は年内に1─2回のRRR引き下げがあると想定。中国政策科学研究会の経済政策委員会副ディレクター、シュー・ホンカイ氏は、もっと急速な引き下げを予想する。
内部関係者の1人は「経済の下押し圧力が比較的大きい以上、われわれには緩和政策が不可欠なのは間違いない」と認めた。
UBSのチーフ中国エコノミスト、タオ・ワン氏は11日記者団に、次のRRR引き下げは3月か4月と述べた一方、LPRは据え置かれるとの見方を示した。複数のエコノミストは、今の物価上昇を考えると実質金利は既に低く、LPRの下げ余地は限られると説明している。現在の1年物LPRは3.8%。