中国は金融緩和加速、米利上げによる資金流出にも配慮
人民銀行は、中国の経済情勢に沿って政策運営を進めていく方針を表明している。とはいえ、今後予想されるFRBの利上げが中国と米国の金利差を縮め、中国からの資金流出を促して人民元を圧迫する恐れがある、というのがエコノミストの考えだ。
幾つかの米大手銀行は、FRBが3月に利上げを開始し、年内に4回実施するというよりタカ派的な政策運営を想定している。
もっとも中国は貿易収支がしっかりとした黒字基調、資本規制も厳格なので、トルコなど他の新興国で起きたような急激な資金流出は避けられるとの指摘が出ている。余永定氏は「(FRBの利上げは)われわれの金融政策にある程度の制約を生み出すとしても、われわれは政策の独立性を維持できる。つまりわれわれが利下げや緩和を望めば、実行可能ということだ」と強調した。
肝心の中国経済はどうかと言えば、BofAグローバル・リサーチのリポートによると17日に公表される昨年第4・四半期国内総生産(GDP)が前年比3.1%増と、第3・四半期の4.9%増を下回る公算が大きい。
ゴールドマン・サックスは、最新の新型コロナウイルス感染状況を踏まえ、中国の今年の成長率予想を4.8%から4.3%に下方修正し、第1・四半期中にRRRの50bp引き下げ、上半期中に1年物LPRの10bp引き下げがあると見込んだ。
成長率を5%に乗せることを目指す指導部
中国の政策担当者が昨年、不動産市場の規制と債務リスクの抑え込みに注力した結果、景気の減速に拍車を掛けてしまった。それでも彼らは、今年秋に重要な共産党大会が控えているため、失業増加を招きかねないさらなる景気の急減速は何としても避けようとしている。
中国共産党中央財経委員会の韓文秀副主任は先週、週刊誌「瞭望」への寄稿で「全ての地域と省庁は経済を安定させる責任を負うべきだ。それは経済的な問題であるとともに、政治問題でもある」と述べ、あらゆる関係部門は経済安定に資する政策を積極的に導入しつつ、経済に悪影響がある政策は慎重に進めなければならないと訴えた。
複数の関係者が明らかにしたところでは、中国指導部は今年の成長率を最低でも5%に乗せて、失業者を増やさないようにすることを目指している。
モルガン・スタンレーのアナリストチームは、政策担当者が経済のハードランディングを避けるために不動産規制の一部も緩和するだろうと予想した。だが不動産バブルの懸念が残っているので、抜本的な政策転換はありそうにないという。
(Kevin Yao記者)

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