最新記事

中国経済

中国恒大集団、不動産管理子会社株売却か 5500億円規模調達の可能性

2021年10月5日(火)10時33分
中国恒大集団のビル

香港上場の不動産会社ホプソン・デベロップメント・ホールディングス(合生創展集団)は、経営危機に陥っている中国不動産大手の中国恒大集団傘下で不動産サービスを手掛ける恒大物業集団の株式51%前後を400億香港ドル(50億米ドル)超で取得する方針だ。写真は香港で2018年3月撮影(2021年 ロイター/Bobby Yip)

経営危機に陥っている中国不動産大手の中国恒大集団は、不動産管理子会社である恒大物業集団の過半株式を50億ドル超で香港上場の不動産会社、ホプソン・デベロップメント・ホールディングス(合生創展集団)に売却する。中国メディアが4日伝えた。実現すれば、中国恒大にとって過去最大規模の資産売却となる。

3000億ドル以上の負債を抱える中国恒大は、中国で過去最大級のデフォルト(債務不履行)に陥る可能性に直面。デフォルトとなればその影響は甚大とみられ、世界の市場も注視している。

中国恒大、恒大物業、合生創展の株式は4日、いずれも取引が停止されていた。

中国国営紙「環球時報」は他メディアの報道を引用し、合生創展が恒大物業の株式51%を400億香港ドル(51億米ドル)超で買収すると報道。メディア名は明示していない。

中国恒大と合生創展に同紙報道についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。

ホプソンは、国内の同業他社に比べて財務状態が良好で、資産が負債を上回っており、上期決算は増益だった。株式時価総額は604億香港ドル(78億ドル)と、年初から40%増加。フィッチは6月、同社を「B+」に格付けした。

恒大物業集団の財務諸表によると、同社の上期決算も黒字となっている。

中国恒大が恒大物業株売却で50億ドル調達できれば、向こう6カ月の外貨建て債の支払いを理論上、賄うことが可能。中国恒大は年末までに約5億ドルの利払いが期日を迎え、来年3月には20億ドルの債券の償還期限を控える。

4日の金融市場では、中国恒大集団の株式売買停止を受けて、オフショア人民元が対ドルで約0.3%下落。売買停止は、香港株式市場のハンセン指数を圧迫する要因にもなった。

アナリストは報道について、中国恒大がなお債務返済を履行しようとしていることを示唆していると指摘。同時に、中国恒大の資産が投げ売りされた場合、中国の不動産セクターや経済全体に影響が及びかねないと懸念する声も聞かれる。

OCBCのアナリストであるEzien Hoo氏は「不動産管理部門が最も容易な処分対象であるようだ。中国恒大が短期的なキャッシュを得ようとしていることを示している」と指摘。「資産売却は依然として支払いのためのキャッシュを得ようとしていることを意味する」として、中国恒大が生き残りを断念したとは確信していないとした。

ナティクシスのアジア太平洋担当シニアエコノミスト、ゲーリー・ウン氏は「中国恒大の流動性危機の解決に向けた前向きな話であることは間違いない。追加の措置も出てくるだろう」と指摘。

その上で「ただ、一部の資産を売却するだけでは全く不十分だ。中国恒大にとって重要なのは、建設プロジェクトを継続し、在庫を販売することだ」と述べた。

4日にはさらに、中国の不動産関連で別の新たな動きがあった。中国恒大にとってより規模の小さい同業である花様年控股集団(ファンタジア・ホールディングス・グループ)が、同日に返済期限を迎えた2億0600万ドルの債務を返済できなかったと発表した。

これに先立ち、フィッチは花様年の信用格付けを「B」から4ノッチ引き下げ「CCCマイナス」とした。花様年はある別の社債を保証していたが、これまで財務報告書には開示されていなかったという。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

FRB後任議長選び、「正式プロセス」既に開始と米財

ワールド

イスラエル、シリア南部で政府軍攻撃 ドルーズ派保護

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 6
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 7
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 8
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 9
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 10
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中