最新記事

金融

テーパリングで意見対立 FRB議長パウエルに総意形成の難題

2021年8月17日(火)11時02分

FOMC内の意見対立は、あるレベルで見ればささいなものに過ぎない。ウォラー理事が先に提案したように、就業者数の力強い伸びを受けて9月にテーパリングを発表するか、あるいはブレイナード理事が言うように、少なくとも11月2─3日のFOMCまで待つかだ。

もう1つの争点は、セントルイス地区連銀のブラード総裁の推す急速なテーパリングと、ダラス地区連銀のカプラン総裁が望む段階的なテーパリングのどちらを選ぶかというもの。

しかしシカゴ大学ブース経営大学院のランドール・クロズナー教授は、小さな意見の相違も積もれば山となる、と指摘する。

クラリダFRB副議長が4日、インフレ率の高止まりについてパウエル議長よりも強い懸念を示し、2023年初めという具体的な利上げ開始時期に言及したことは、一部幹部の間でムードが変わりつつある兆しかもしれない。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの首席米国エコノミスト、ルビーラ・ファルーキ氏は「FOMCの中核メンバーが政策変更時期の案を示すとは驚きだ」と述べた。

妥協案か

FOMC内でテーパリングと利上げを急ぐべきだとの意見が強まっていることから、パウエル氏は中核メンバーを味方に付けておくために早めに動かざるを得なくなるかもしれない。

その場合、2013年の歴史が繰り返されることになる。パウエル氏と他の理事2人はバーナンキ氏を説得し、実際に反対票を投じることなくテーパリングを表明させることに成功した。バーナンキ氏は回顧録で「私は彼らに、証券購入に関する私の意見はあなた方と異なるが、あなた方の意向を取り入れるよう最善を尽くすと告げた。『理事会の支持を得られなければ議長としての私の立場は維持できない』と話した」と振り返っている。

明確なのは、パウエル氏が造反を防ぐために妥協案の策定を迫られるであろうことだ。

ダラス地区連銀のカプラン総裁は意見対立の表面化について「FOMCは討論と対立がある時に最善の結論を出せると考えている」と強調するとともに、「(現在の対立は)より良い政策決定につながる可能性の方がずっと大きい」と語った。

(Ann Saphir記者 Lindsay Dunsmuir記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・インド、新たな変異株「デルタプラス」確認 感染力さらに強く
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア西部2州で橋崩落、列車脱線し7人死亡 ウクラ

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 5
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 8
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中