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海外相手のビジネスで、上手くいかない人が陥りがちな「異文化の罠」とは

2021年6月29日(火)19時48分
flier編集部

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グロービス提供

高橋 まず発展段階の違いによる壁です。日本の市場は成熟していますが タイやインドネシアなど成長中の国では違った仕事の進め方が求められます。

何十年も成熟した日本で生きてきて、そこから成長しているマーケットに行くと、リスクの取り方も違ってきます。発展段階の違いに起因するビジネスの違いという壁がありますね。

2つ目はビジネス領域の壁です。海外は比較的小さな拠点が多く、1人で販売とマーケットの両方を担当したり、日本でやっていなかったことを初めてやらされたりします。慣れない仕事をいきなりやる難しさです。

3つ目は、組織での役割の壁です。日本で部下のいなかった人が海外でいきなりチームリーダーを任されたり、日本で課長や部長だった人が海外では役員あるいはトップを務めたりします。そうするといろいろな組織運営面での壁にぶつかります。

このように海外で仕事をするに当たっては、ビジネス上、組織上の壁があります。しかしその認識がないと、すべて異文化による壁だと錯覚してしまうことになりかねません。

そして4つ目が異文化の壁です。

「発展段階の壁」の中で書きましたが、ベトナムの現地スタッフがスピードばかりを重視するあまり、非常にいい加減な仕事をしていたという話があります。しかし成長市場であれば、そうせざるを得ない事情もあるでしょう。

日本のように成熟したマーケットの場合は、もっと顧客に寄り添う姿勢が求められますが、インドネシアやベトナムでは早く商品やサービスを提供するニーズの方が強い。それはつまり文化の違いではなく、経済の発展段階の違いによるものということです。

そのように解きほぐしていくと、文化の違いではなく、より本質的な課題が見えてくるはずです。

荒木 4つ目の文化の壁が異常に強調されてしまうということですね。

高橋 そういうことです。異文化の壁を否定しているわけではありません。異文化の壁も確かにあるのですが、その前にビジネス上の壁などをつぶさに見ていくと、もっと適切な対応ができるのではないでしょうか、と提起しています。

荒木 この思考のフレームは、汎用性がありますね。例えば大企業がスタートアップと組む場合にも当てはまりそうです。

高橋 おっしゃるとおりですね。

荒木 海外中心の商社勤務を経て、グロービスへ移られたわけですが、何がきっかけだったのでしょうか。

高橋 8年間の海外駐在の中でさまざまなビジネスパーソンに出会い、30代、40代前半でバリバリ活躍している人も多く、刺激を受けました。

30代前半まで丸紅でいろいろと経験させてもらい、とても感謝していますが、もっと自分をスピーディにストレッチして勉強したいと考え、紹介されたのがグロービスでした。成長できる環境だと思いましたが、最初は大変でした。それこそ異文化の経験でしたね(笑)。

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