最新記事

石油

米石油パイプラインにサイバー攻撃 ロシア関与も噂されるハッカー集団「目的は金」

2021年5月11日(火)09時02分

米パイプライン最大手のコロニアル・パイプラインがサイバー攻撃を受けて操業を停止した問題で、米連邦捜査局(FBI)は10日、今回の攻撃がハッカー集団「ダークサイド」による犯行と断定した。写真はコロニアル・パイプライン(2021年 ロイター)

米パイプライン最大手のコロニアル・パイプラインがサイバー攻撃を受けて操業を停止した問題で、米連邦捜査局(FBI)は10日、今回の攻撃がハッカー集団「ダークサイド」による犯行と断定した。

これに先立ち、ダークサイドは声明を発表。コロニアル社に直接言及していないものの、「最新のニュースについて」という見出しで「われわれの目的は金もうけであり、社会に問題を起こすことではない」と表明。要求する金額には触れず、将来における社会的な影響を回避するため、仲間のハッカーらに対するチェックを開始すると述べた。

こうした中、米国家安全保障副補佐官(サイバーセキュリティー担当)のアン・ニューバーガー氏は、ダークサイドとロシア政府との間につながりがあるか現在調査していると明らかにした。

バイデン大統領は、現時点ではロシアが関与していたとの証拠は得られていないとしながらも、「使用されたランサムウエアが、ロシアにあるとの証拠はある」とし、「対応にあたり何らかの責任はある」と述べた。また、コロニアルのパイプライン再開までにかかる時間次第で、必要に応じて追加策を実施する用意があると語った。

ニューバーガー氏は、政府がコロニアルに対し支払いの要求に応じるよう助言しているかと質問に対し、「これは民間部門が決定することであり、バイデン政権は現時点でいかなる助言も行っていない」と述べた。

コロニアルは10日、今週末までに営業運転を「実質的」に再開できる見込みと表明した。ただし実質的な再開が全面復旧を意味するかは不明。9日時点では主要なパイプラインが依然停止しているものの、石油ターミナルと輸送拠点を結ぶ小規模ラインの一部は再稼働した。

コロニアルのパイプラインは米国の「インフラの頸部」とも呼ばれており、操業停止が長引けば夏場のドライブシーズンを前にガソリン価格が急騰し、米消費者や経済に痛手となる恐れもある。

エナジー・アスペクツのアナリストは「パイプラインが数日で復旧すると予想している。このため、ルイジアナ州やテキサス州東部の製油所への影響は限られるだろう」とし、国内の燃料在庫の水準に「不安はない」と語った。

関係者によると、ダークサイドはランサムウエアを仕込んで金銭を要求、拠点が分からないよう旧ソ連諸国に身を隠すことで知られているという。ランサムウエアは、データを暗号化してシステムを停止させ、金銭を要求するマルウエアの一種。

一方、米南東部では、ガソリン不足を懸念した消費者が給油する姿も見られた。ガスバディーの石油分析部門責任者はジョージア、ノースカロライナ、テネシーの各州でパニック買いが出たと述べた。

米国自動車協会によると、全国平均のガソリン価格は1ガロン=2.96ドルに上昇し、2018年5月以来の高値を付けた。

*内容を追加しました。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、金利変更の選択肢残すべき リスクに対応=仏

ビジネス

ECBは年内利下げせず、バークレイズとBofAが予

ビジネス

ユーロ圏10月消費者物価、前年比+2.1%にやや減

ワールド

エクソン、第3四半期利益が予想上回る 生産増が原油
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中