最新記事

雇用

ギネスが認めた「世界最高齢の総務部員」 勤続65年、90歳のエクセル達人が語るITの極意とは

2021年4月12日(月)18時00分
山田 清機(ノンフィクションライター) *PRESIDENT Onlineからの転載

2020年、世界最高齢の総務部員としてギネスに登録された玉置泰子さん(写真左)2020年、世界最高齢の総務部員としてギネスに登録された。(写真右)玉置さんのギネス認定証。

目標は「達成できそうな数字」

個人を追い込む成果主義ではないということだろうか。ちなみに玉置自身に個人としての受賞歴はないというから、勤続年数の長さは個人として突出した能力があることとリンクしているわけではないようだ。

いくら、課やチームで評価されるといっても、ノルマがきつければチームが追い込まれることになる。それは結局、個人を追い込むことになるのではないだろうか。佐藤が言う。

「年度初めに全社の売り上げ目標を決めて、それを各課に細分化して、さらに各担当チームに割り当てていきます。玉置が言っているチームとはこの担当チームのことで、2人から3人が1組になって顧客を担当しています。しかも、全社の売り上げ目標が『達成できそうな数字』なので、チームが追い込まれるということもないんです」

達成できそうな数字......。またしても、摩訶不思議な言葉の登場である。

課長時代に全員にボイコットされる大失敗

とりあえず、サンコーが個人を追い込まない会社であるとして、では、女性の処遇はどうだろうか。玉置の年齢を考えればITスキルの問題も気になるところだ。90歳という高齢で、果たして職場のIT化に追随していくことができているのだろうか。

「私は40代で課長になりました。サンコーは女性が普通に役職に登用されている会社で、いまは女性の取締役も部長も課長もいてますけれど、私が40代で課長になった当時は、まだ会社の組織がきちっとできていない時代で、マネジメントということもよくわからないまま年功で課長になったんです。

若い頃の私は融通の利かん人間でね、何でも言うたら聞いてくれるやろと思っていました。ところが決算の時期に『残業して』と言ったら、課の全員からボイコットされてしまったんです。それから試行錯誤して、『一緒にやりましょう。お願いしますね』というふうに、絶対に上から物を言わないようにしました。だから、課長とかいう意識、今でもぜんぜんないんです。みんなと一緒に成長していこうということですわ」

玉置は現在、漢字検定準一級の試験に向けて勉強中だという。90歳にして文字通り"成長"のさなかにあるというから、驚く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中