コロナ禍で「売れた↗」「売れなくなった↘」商品ランキングTOP30

2021年3月27日(土)10時08分
伊藤 歩(金融ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

継続的に伸びるヘアトリートメント

ヘアトリートメントも、20%~30%の伸びが続いている。美容師と至近距離での接触が長時間続く美容院は、コロナ禍で行く頻度が下がった場所の1つだ。理容室、美容室は、近年過当競争にさらされ、そもそもコロナとは無関係に倒産や廃業の件数が増加傾向にあった。

newsweek_20210325_224806.jpg

信用調査機関の東京商工リサーチによれば、コロナ前の2019年1年間に倒産した理美容室は119件。これでも過去最高なので、一見少なく見えるが、倒産に至る前に閉店・廃業している店は数千店に上るという。

「2020年1年間の倒産件数は97件と前年から減ったとはいえ、依然として高水準。理美容室を取り巻く環境の厳しさに変化はない」(東京商工リサーチ情報部)。

感性の合う美容師にたどり着くまで時間がかかった人は少なくないはずだ。慣れ親しんだ美容院が廃業すると、「次」はそう簡単には見つからない。まして外出を自粛すべきとなれば開拓意欲は削がれる。

最近は自分で手軽に髪を染められるカラー剤や、自宅で縮毛矯正が可能なストレートパーマ剤なども市販されており、これらがヘアトリートメントに分類されていることからすると、美容院に行けない、行かない代わりとして販売が伸びている可能性がある。

一方、低迷が続き、一向に上向く気配がないのが口紅。マスクをしないで済む生活が常態化するまでは復活は望めないだろう。

意外な食品も売れ行き好調

練乳もマスクや手指消毒剤に比べると地味だが、着実な伸びを示している。練乳の需要期はイチゴが出回る12月~5月と、かき氷の季節である7~8月だが、2020年は若干のでこぼこはありながらも、年間通して10%~30%前後の伸びが続き、年が明けてからも20~30%の伸びが続いている。

newsweek_20210325_225154.jpg

総務省の統計によれば、昨年の冬はイチゴが小売り段階で1キロあたり100円前後高かった。最盛期の12月~1月がまだコロナの影響が本格化する前だったということもあるのか、練乳は対前年比2割減程度で推移したが、夏場に30~50%もの伸びを示し、12月以降も高水準の伸びが続いている。ちなみにこの冬のイチゴの価格は、12月は対前年比74円高、1月は210円安。

内食が増えて家でかき氷を作ったり、イチゴを食べる機会が増え、なおかつイチゴ狩りにも行けない状況下で、練乳の需要が高まったということか。

玩具メーカー菓子も、『鬼滅の刃』が大きく貢献したが、年明け以降も需要が継続しているのは、第2の鬼滅の呼び声高い『呪術廻戦』など、鬼滅以外のアニメも貢献しているため。

爆発的に売れた麦芽飲料

麦芽飲料も特異な動きを見せた。麦芽飲料といえばネスレのミロ。鉄分やビタミン、カルシウムなどがバランスよく含まれている栄養機能食品である。健康志向が高まる中、昨年3月あたりから需要が伸びてはいたのだが、7月に入ってツイッターで話題になると、爆発的に売れ出した。

8月上旬に対前年比289%を記録したところで生産が追いつかなくなり、9月末にいったん販売が休止された。

そこからは流通在庫がはけていくだけなので、徐々に伸び率が下がり、11月16日に販売が再開されるやいなや、再度爆発的に売れ、12月7日週には対前年比1000%を突破。またもや供給が追いつかなくなり、12月8日に再度販売休止を発表した。

newsweek_20210325_225516.jpg

再び流通在庫からの販売となり、その後は週を追うごとに落ち続け、1月25日週にはついに対前年比5%、つまり95%減まで落ちたが、3月に入って供給が再開、スーパーやコンビニの店頭に戻ってきた。まだまだコロナ禍は続く。今後も思わぬヒット商品が誕生することは間違いないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

KKR、第2四半期の調整後純利益が9%増 手数料収

ワールド

汚職対策機関の独立性回復、ウクライナ大統領が法案に

ワールド

米中貿易合意の下地整うと確信、完了はまだ=米財務長

ビジネス

マイクロソフト、時価総額4兆ドル突破
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中