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「それは私の仕事ではありません」 ワークマンはそんなことを言う社員をなぜ大歓迎するのか

ワークマン専務取締役 土屋哲雄さん

ワークマン専務取締役 土屋哲雄さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)

改革への反発を解消した秘策

もちろん、慣れないパソコンに向き合うことについては、それまで経験と人脈で業績を積み上げてきたベテラン社員からの反発もなかったわけではない。だが、14年の「中期業態変革ビジョン」策定時にデータ分析の能力を人事制度に反映させ、一定の活用能力を部長への昇格要件にした。もっと驚くのは、会社がスキルアップを要求する見返りに、5年間で100万円のベースアップを約束したことだ。

「売上増を前面に掲げる会社はあっても、賃上げをコミットする経営者はまずいません。これは結構インパクトがありました。しかし、これから社内の改革をやり抜こうとするからには絶対に必要なことだったと確信しています。実際、その後のマネジャー以上の退職者はゼロ。皆さんが理解してくれたからでしょう」

経営幹部は極力出社しない

この間「しない経営」も着実に進んだ。土屋氏は基本的なスタンスとして「もしダメだったらやめればいい」と考えていたという。そんな彼が決断したことの1つが、社内行事や夜の付き合いをなくすこと。おそらく、女性社員たちは大歓迎したに違いない。パート募集にもその旨を明記すると、応募者数は4倍に増えた。

経営幹部は極力出社しないというのも意表を突く。会社で部下の顔を見ると、ついしなくてもいい指示を口に出してしまう。それらは往々にしてムダな仕事で価値を生むことはまずない。そんな考えから、極力出社せず現場に行くことを重視しているのだ。

女性社員の活躍が目立つワークマンプラス

こうした取り組みが成果として現れたのが、18年9月に大型ショッピングモールのららぽーと立川立飛(たちかわたちひ)に初出店した「ワークマンプラス」だろう。データ分析が方向性を示し、ワークマンらしさも損なわない一般向けのアウトドアウエアを扱う新業態のショップだ。このマーケットの規模は、土屋氏の試算では4000億円。まさに同社の新たな大海原になりうる。

「幸い、出だしから好調で、2年強で270店舗を数えるまでになりました。ここでは女性社員の活躍が目立ちます。従来のワークマンであれば製品は棚に並べ、ハンガーに吊るすだけでしたが、新たにマネキンを使ったりしています。ショップにデザインとアートが加味されたわけです。ショッピングバッグの上に製品を置くとインスタ映えするとか、まさに女性社員ならではのセンスを生かしてくれています。それまで隠れていた才能が頭角を現すようになりました」

それは「#ワークマン女子」により顕著だ。とにかく、これから伸ばしていく店舗形態なので、女性スタッフの成長が成否を握っているのは間違いない。土屋氏の入社当時の男女比率では1割にすぎなかった女性社員が、いまは2割に増え、明らかに現場の主力となっている。一線に立つ彼女たちの登用についてはどう考えているのだろうか。企業によっては管理職になりたがらない女性が多いことを嘆く人事担当者もいるが、その点にも一家言ある。

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