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ハンズフリー化進む「自動運転」 安全や性能基準ないまま開発レース加速

2020年7月25日(土)14時24分

オートパイロットでもハンズフリーならず

自動車産業における最初の半自動運転システムの1つであるテスラの「オートパイロット」について、国家運輸安全委員会は、ドライバーの注意を道路からそらすことになり、死亡事故につながると批判している。NHTSAは2016年以来、「オートパイロット」を搭載したテスラ製自動車が絡む衝突事故15件を調査している。

「オートパイロット」は当初「ハンズフリー」をうたっていたが、テスラはすぐにその立場を変えた。現在では「オートパイロット」の作動中、ドライバーはハンドルに手を添えていなければならない、というのが同社の主張だ。

ドイツのある裁判所は14日、テスラに対し「自動運転が可能」など同社製車両の運転支援システムについて、誤解を招く宣伝を繰り返すことを禁止する判決を下した。

規制や基準が存在しないため、JDパワーや「コンシューマー・リポート」誌、全米自動車協会(AAA)などの団体は、標準的な用語や定義について一致できるよう自動車メーカー各社を説得しようと試みている。この取り組みについては、米運輸省や米自動車技術者協会からも支持されている。

だが、主要な業界調査団体の間では、技術の呼称についてさえ意見がまとまっていない。「ハンズフリー」に代わる用語として、JDパワーは「積極的運転支援」、IHSマークイットは「拡張的ハンズオフ運転」を推している。

「運転アシスト」は安全向上につながるか

デトロイトの自動車メーカー各社は、テスラに比べ、自社の半自動運転システムにあまり大胆な呼称を与えていない。

JDパワーのクリスティン・コロッジ氏によれば、大半のハンズフリー運転システムの柱となっている車線維持支援(新車の70%)、全車速追従機能付クルーズコントロール(ACC、同77%)など、先進運転支援システムを搭載した新車を購入・リースする消費者は、増えつつあるという。

自動車メーカー側は、自動運転技術の搭載が広がれば、衝突事故が減少し、消費者にとっては自動車保険料の低下につながると説明する。ただ、これまでのところ保険会社は慎重で、こうした技術が事故関連コストを抑制することを示すデータがもっと必要だとしている。

保険産業の調査部門である道路安全保険協会(IIHS)のデビッド・ハーキー代表は「私たちは安全性という点から注目している。これらの技術は、道路を利用する人々の安全性を向上させるのだろうか」と話している。

Ben Klayman Paul Lienert(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


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