最新記事

日本政治

新型コロナ地方交付金3兆円を狙う「ハイエナコンサル」 地方は8割外注、その半分は東京へ

2020年6月19日(金)17時00分
木下 斉(まちビジネス事業家) *東洋経済オンラインからの転載

そもそも、「それぞれの地方が独自性を発揮して予算活用ができるように」と、地方が独自に策定する計画に対して、国が国庫からお金を出していたわけです。しかし、結果的には「東京のコンサルが受託して計画をつくって地方自治体に納品していた」という笑えない実態があったのです。

当時は「地方創生総合戦略バブル」などと呼ばれ、それこそ金太郎飴のように自治体の人口予測、産業構造、今後の予測みたいな同じような分析が載った、戦略などとは全く呼べないような「名ばかり総合戦略」が自治体に納品されていました。

結局、さらに「東京集中」が進んだ

そのような戦略をもとに、地方創生先行型交付金、地方創生加速化交付金という交付金が国の100%負担で配られ、さまざまな事業が提案されて、実行に移されました。今でも記録が残っているので、見てみると頭を抱えてしまうような事業などが乱立しています。

例えば、とある自治体では地方創生にかかわる相談を「年間100件受け付ける」というのが目標の事業(受け付けるだけ!)で2900万円。また別の自治体では、年間1750万円の売り上げ目標の事業になぜかそれ以上の3100万円をつけました。さらには、「産業革命遺産」の「スマホアプリ」に9500万円、林業の新たな従事者3名確保と商品を1つ開発するのに5000万円、と言った具合に、一読してわかるような、なかなか「悩ましい事業」に、大胆にも国の予算が気前よく配られていました。

これら一件一件が「高い」「安い」という話を言うつもりは今さらありません。しかし、地方創生政策が本格的に始動しこれらの予算が投入されて行われてきた結果、いいことはあったのでしょうか。2015年以降、「東京圏への転入超過数」は年間約12万人から約14万人となり、減るどころか、むしろ増加していきました。もともと政府の目標には、2020年には東京圏の転出入を均衡させる高い目標があったのですが、今は語られなくなりました。

もちろん、安易に東京のコンサルや代理店などに投げてしまう地方自治体も大いに問題です。そろそろ、こうしたやり方では何も解決しないことに気づかなくてはなりません。東京のコンサルが相次いで今また莫大な国庫交付金を狙って営業を始めているようですが、そんな曲がりモノの営業に、地方自治体は飛びついてはいけないのです。

この5年間で費やした膨大な地方創生関連予算は、都市と地方の関係をよりよいものにすることはなく、むしろ東京集中を加速させるものだったのです。何よりも予算が東京から国にいき、国から地方に流れていったのに、その予算さえ東京に還流してきているわけですから、それでは全く話にならないのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中