最新記事

株価

「老後2000万円」騒動から1年──コロナ襲来で「つみたて投資」はやめるべきか、続けるべきか

2020年6月26日(金)11時00分
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所)

なぜ下値メドは切り上がるのか

今後も日経平均の下値メドは時間をかけて切り上がると考えられる。なぜなら、企業は稼いだ利益から配当などを支払った残りを自己資本に積み増すので(内部留保という)、その分だけ下値メドの水準が高くなる。2000年以降に下値メドが徐々に切り上がったのも同じメカニズムだ。

もちろん、リーマンショック時のように多くの日本企業が一時的に赤字に陥ることもあるだろう。その場合は赤字額の分だけ自己資本が減るので、それに見合って下値メドも切り下がる。赤字が続けば下値メドが徐々に切り下がるが、多くの企業が何年間も赤字が続くような事態が起こるだろうか。

実際、現在はコロナ禍による企業業績への打撃が懸念されているが、20年度の業績予想を公表した企業について集計すると、コロナ禍の終息すら見えない中にあっても、日経平均採用企業は全体として純利益(最終利益)で黒字を確保できる見込みだ。

19年度と比べて約14%の減益予想なので株価の大幅上昇こそ期待できないが、年度末には利益の一部を内部留保して下値メドが切り上がるはずだ。翌年以降も同様で、年によって利益の額は増減しても黒字である限り自己資本を積み増す。これが下値メドが趨勢的に切り上がるメカニズムだ。

つまり、長期的には日経平均の緩やかな値上がりを期待してよいと思う。

Nissei200625_5.jpg

セミナー等でよく聞かれるのは、「日本は少子高齢化が進んでいるのに、日経平均が長期的に上がると考えて大丈夫か」というものだ。確かに日本国内の経済は長期的に縮小する可能性が指摘されている。しかし、日本の上場企業の多くは海外で稼いでいることを忘れてはならない。

図表4で示したように過去20年間では下値メドが年率約6%で上昇した。この期間にはアベノミクス初期の好業績が含まれているうえ、現在は世界経済が成熟し低成長の時代に移ったことを考えると年率6%は難しいと思われるが、長期平均で3~5%の値上がりは期待してよいだろう。

もちろん世界中で経済が縮小すると考える人や手っ取り早く儲けたい人には株式等への長期投資は向かない。一方、つみたてNISA等を活用して長期で資産形成を目指す人は、短期的な株価の乱高下に惑わされることなく、どっしり構えて投資を続けるのが正しい選択だろう。

Nissei190603_IdeShingo.jpeg[執筆者]
井出 真吾
ニッセイ基礎研究所
金融研究部上席研究員 チーフ株式ストラテジスト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中