最新記事

日本経済

日本の全世帯消費支出、3月は前年比-6.0% 消費税と新型コロナで15年3月以来の減少幅

2020年5月8日(金)10時48分

総務省が発表した3月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の実質消費支出は前年比6.0%減(変動調整値)となった。写真は3月、都内のドラッグストアで行列する人々(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

総務省が8日発表した3月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の実質消費支出は前年比6.0%減(変動調整値)となった。減少は6カ月連続で、減少幅は2015年3月のマイナス10.6%以来の大きさだった。

ロイター事前予測調査の同6.7%減より減少幅は小さかった。減少は6カ月連続。これは、2016年3月から2017年5月の15か月連続のマイナス以来の長いマイナスとなる。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため外出自粛要請が出ていたが、その影響が明確に出た格好だ。被服や教養娯楽が大幅に減少。増税以降の減少傾向に、さらに新型コロナの影響で消費の弱さが浮き彫りになった。

外出自粛で外食・旅行・レジャーが大幅減

3月は、外出自粛要請で外食需要が大幅に減少。食品の中でも外食は食事代(前年同月比30.3%減)、飲酒代(同53.5%減)が大きく落ち込んだ。

教養娯楽は同20.6%減。旅行需要が大幅に減少し、宿泊費は同55.4%減、パック旅行費は同83.2%減だった。

いわゆるレジャー支出も大幅に減少。映画・演劇等入場料は同69.6%減、遊園地入場・乗物代は同86.8%減だった。一部遊園地は3月時点から休園していた。

被服は同26.1%減。3月は例年、入学式などのイベントで背広の消費が増える時期だが、今年は休校要請が影響し需要が減少した。

一方、新型コロナウイルスの影響で支出が増加した項目もある。自宅で料理をする人が増えたことで食料のうち、米(同15.3%増)、パスタ(同44.4%増)、即席麺(同30.6%増)などが増加した。

品薄状態が続くトイレットペーパーは同26.4%増だった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、モノ不足を懸念した消費者の不安が影響した可能性がある。

総務省は「家計消費は外出自粛等の影響により減少しているが、一部巣ごもり需要も生じており、今後の動向には注意が必要」との判断を示した。

増税後弱かった消費にコロナが追い打ち

第一生命経済研究所の経済調査部・副主任エコノミスト、小池理人氏は「このまま消費の弱い動きが継続すれば、当然、企業業績の悪化も見込まれる。設備投資や貿易の停滞、賃金・ボーナスの引き下げなど、悪い影響が出てくるだろう」と指摘。

新型コロナの感染拡大を抑制できたとしても、消費の戻りにはかなりの時間を要すると予測。「個人消費がV字回復するシナリオは考えにくく、賃金の引き下げなどを通して消費は弱い動きが続くだろう」とコメントした。

*内容を追加しました。

(浜田寛子 編集:内田慎一)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染23人確認 39日ぶりに30人を切る
・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(7日現在)
・「ブラック企業・日本」がコロナ禍で犯し続ける不作為


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    悪夢の光景、よりによって...眠る赤ちゃんの体を這う…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中