最新記事

医療

新型コロナウイルスで世界のマスク市場が「無法化」  米国の高額買い占めに各国が懸念も

2020年4月6日(月)08時35分

新型コロナウイルスに対応する医療従事者を守るためのマスクを確保する動きが世界中で加速しており、マスク市場は「ワイルド・ウエスト」(無法で粗野な米国開拓時代)と化している。リビアのマスク工場。3月撮影(2020年 ロイター/Ayman Al-Sahili )

新型コロナウイルスに対応する医療従事者を守るためのマスクを確保する動きが世界中で加速しており、マスク市場は「ワイルド・ウエスト」(無法で粗野な米国開拓時代)と化している。米国が既に契約を結んだ他国よりも高い価格を払って買い占めるケースも見られている。

フランスとドイツの高官によると、米国はマスクの世界最大生産国である中国に市場価格を大幅に上回る値段を払っている。既に契約を結んだ欧州の国から契約を奪い取ることもあるという。

ドイツのメルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の幹部は、ロイターに対して「お金は問題でない。米国は必死だ。どんな値段でも払う」と話した。

新型ウイルスは昨年中国で初めて発生して以降、パンデミック(世界的大流行)と化した。欧州や南北アメリカ、その他の地域で各政府が必死に医療従事者や介護施設の従業員、国民の防護製品を確保しようとしている。

米国土安全保障省(DHS)の当局者は今週、米企業と米政府は国外から調達する防護具について、市場価格以上の値段を払っているとロイターに匿名で発言。米当局者は「あり余るまで買い続ける」とし、8月まで海外からの調達は続くかもしれないと述べた。

独政府のマスク調達を支援する企業の従業員は、3月の最終週から状況が一変し、市場で米国の存在が高まったと指摘。購入契約が成立していても必ず納品される保証はないと懸念を示し、「需要が供給をはるかに上回っている」と述べた。

フランスでも3つの地方政府のトップが同じような見解を示した。仏東部グランテスト地域圏の幹部は、マスク確保のために絶えず闘っていると指摘。直前で引き渡しの取り決めが変わると話し、「米国人は飛行場の滑走路で現金を出し、われわれの提示額の3倍、4倍を支払う」と懸念を示した。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・「アビガン」は世界を救う新型コロナウイルス治療薬となれるか
・新型コロナに「脳が壊死」する合併症の可能性
・米大、新型コロナウイルス用「貼るワクチン」動物実験で効果確認


cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米年末商戦売上高が初の1兆ドル超えか、伸び率は鈍化

ビジネス

FRB、現時点でインフレ抑制に利上げ必要ない=クリ

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米労働市場の弱さで利下げ観

ワールド

メキシコ中銀が0.25%利下げ、追加緩和検討を示唆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中