最新記事

日本企業

新型コロナウイルスが蝕む孫正義の夢 10兆円の巨大投資ファンド、投資先の大半に問題抱える

2020年4月26日(日)12時13分

低迷する株価、相次ぐIPO延期

米ウーバー・テクノロジーズは3月、新型コロナ危機を乗り切る資金が十分にあると表明した。ただ、株価は2019年の上場時の公開価格を40%下回っている。

東南アジアのグラブは、料理宅配サービスは好調だとしている。中国の滴滴出行(ディディ・チューシン)はコメントを控えた。

ソフトバンクGはビジョン・ファンドと別に、ウィーワークや衛星通信のワンウェブなどに直接投資も行っている。ワンウェブは3月に破産法適用を申請した。

前出の関係筋によると、ソフトバンクGが出資する新興企業のうち、オンラインストア構築サービスのビッグコマースなど少なくとも6社は、IPO計画を2021年に延期した。

別の関係筋によると、ビジョン・ファンドが出資し、今年IPO申請書類を非公開で提出した米料理宅配スタートアップのドアダッシュも、資本市場の不安定な動向を踏まえて計画を見直しているという。

ドアダッシュはコメントを控えた。ビッグコマースはコメントの要請に返答していない。

ビジョン・ファンドは、出資を受けたサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)やアラブ首長国連邦(UAE)のムバダラに配当を支払っており、投資先企業のIPOは重要な資金調達手段だ。

関係筋によると、PIFとムバダラはここ数週間に、ビジョン・ファンドのパフォーマンスや配当支払い能力に懸念を示したという。

ムバダラの広報担当者は取材に対し「厳しい経済状況の中、われわれは長期的視野を持つパートナーとしてファンドのパフォーマンスを最適にする方法についてソフトバンクGと話し合っている」と述べた。

PIFはコメントを控えた。

一部の投資には明るい材料も

新型コロナを受けた移動制限により消費者が自宅で過ごすことを余儀なくされたことで、ソフトバンクGのポートフォリオには明るい材料を提供している企業もある。中国の動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック)の利用が拡大し、運営会社の北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)は年末までに従業員を倍近くに増やす方針を示した。

韓国の電子商取引企業クーパンは受注が急増。中国のオンライン医療サービス会社、平安健康医療科技<1833.HK>はオンライン相談の需要増加を背景に株価が年初の水準から倍に上昇した。

スタートアップ企業が不況を乗り切るのに十分な資金を有していれば、景気回復につながると専門家は指摘する。

ただ、明るい材料を提供する企業は少ない。

インドの新興ホテルチェーン、OYO(オヨ)・ホテルズ・アンド・ホームズは、利益を生み出す前に巨額の資金を投じて急速に事業を拡大させる孫氏のアプローチの典型的な例となった。移動制限が導入されて以降、世界の旅行業界は突如として危機に陥った。

関係筋によると、オヨは不可抗力事態が発生したとし、ビジネスモデルの柱だった売上保証を撤回。人員を調整し、事業拡大ペースを抑制している。

オヨはコメントを控えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出

ビジネス

ECB、成長率とインフレ率見通し一部上方修正=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 7
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中