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新型カローラ、3ナンバー化で2万台突破の意味 新規顧客獲得の影で長年のファンは......

2019年12月20日(金)18時00分
御堀 直嗣(モータージャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

初代「カローラ」のボディサイズは通い慣れた道で気兼ねなく移動できるクルマを体現していた

初代「カローラ」のボディサイズは全長3845×全幅1485×全高1380mm。通い慣れた道で気兼ねなく移動できるクルマを体現していた(写真:トヨタ自動車)

新型カローラの問題点

それまでのモデルと比べて格段によくなった12代目カローラだが、気になる点もある。

単に車体寸法が3ナンバー化され大柄になっただけでなく、運転席の着座位置が8センチ後ろへ下がったこともあり、車幅感覚がつかみにくくなっている。それによって、クルマとの一体感を覚えにくく、市街地で自在にクルマを操れるという印象が薄かった。

新型カローラ発表会で豊田章男社長は、「大衆車とは、街にいっぱいあふれるクルマ」とビデオメッセージで語ったが、そのためには通い慣れた道で気兼ねなく移動できるクルマである必要があるだろう。

買い替え候補に選ばれるクルマか

近年のクルマは、衝突安全性能の厳しさが増していることから、車体を大柄にして骨格を太くし、衝突事故から乗員の命を守ることに努めている。

しかしながら、クルマの周囲を運転者自らの目で確認しにくくもなっている。そこを補うため、センサーやカメラで障害物を知らせる機能が普及しているが、それらはあくまで二次的な装置であって、人はやはり自分の目からの情報を頼りにしている。それが安心につながっている。

国内では軽自動車が市場占有率を伸ばしているが、その背景には車幅を含めた車両感覚のつかみやすさがあるはずだ。ちなみに、現在の軽自動車規格の車幅寸法は、1960年代の初代カローラやサニーとほぼ同じである。それが、大衆車の証しともいえるのではないだろうか。

日本特有の軽自動車をガラパゴスと揶揄し、税制などで優遇されているとの声もあるが、実は消費者にとっての本当の大衆車像を軽自動車は映し出しているのである。

では、大衆車の祖とも言えるカローラはどうだろう。

初代カローラやサニーが販売された1960~1970年代にかけて日本のモータリゼーションは発展し、道路や駐車場が作られてきた。その社会基盤が50年経った今も残っている。

戸建て住宅の駐車場は、クルマの3ナンバー化によっても拡幅されることはなく、新車へ代替するたびに入庫や出庫に余計な切り返しを必要とさせ、乗り降りさえ開けたドアの隙間から横へすり抜けなければならない状況であろう。

発売から1カ月で約2万2000台の受注となった新型カローラの購入者は、ゆとりある車庫や、家の前の道路が幅広い人たちではないだろうか。彼らにとって新型カローラは、性能に優れる良品であろう。

一方、築数十年の家や、道幅の狭い旧市街に住みながら永年にわたってカローラに乗り継いできた人々にとって、はたして新型カローラの4ドアセダンやステーションワゴンは、買い替えるべきクルマとなっているだろうか。

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