最新記事

日本企業

日産、西川社長16日付けで辞任 ゴーン前会長ら不正の被害350億円以上

2019年9月10日(火)07時50分

日産自動車は、西川広人社長(写真)が9月16日付で辞任し、山内康裕代表執行役がCEOを代行すると発表した。横浜の日産本社で開かれた記者会見で7月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

日産自動車は9日、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)が16日付で辞任し、山内康裕最高執行責任者(COO)が暫定的な後任に就くと発表した。指名委員会が10月末をめどに正式な後任を決める。特別背任などの罪で起訴された前会長カルロス・ゴーン被告らの不正によって「350億円以上」の被害を受けたとする社内調査結果を公表し、ゴーン被告らに損害賠償を請求する意向を示した。

9日の取締役会終了後、取締役会議長の木村康社外取締役らが本社で会見した。木村氏は、西川社長が従来から辞任の意向を示しており、社内調査という「大きな区切りを迎えた」と指摘。取締役会からの要請を受け、西川氏から「次の世代へのバトンタッチを加速してほしい」と辞任の意思表明があった、と述べた。正式な後任決定前での辞任については、会社が置かれた客観的な情勢やタイミングなどから判断したという。

取締役会では、1年かけたゴーン被告らの不正に対する社内調査結果が報告されたほか、株価に連動した報酬を受け取る権利「ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)」をめぐり、権利行使日の変更によって本来得られるよりも多くの額を西川社長が得た問題への対応を協議した。

SARの問題について、監査委員長の永井素夫社外取締役は「西川氏が多くの報酬を得るために権利行使日を動かしてくれという指示はしていない。本来は自分でやらなければいけないところ、秘書(部下、ケリー被告)に任せていたことが社内規定違反だった」と意図的な不正を否定した。

関係者によると、SARによる報酬支払に不正な点があったのは西川社長のほか、ゴーン被告と前代表取締役グレッグ・ケリー被告、元取締役2人、現役員4人の計9人。ただ、日産はゴーン・ケリー両被告以外の役員は不正の認識がなく、指示や依頼をした事実もないため不正行為に関与したとみる余地はないと結論づけ、責任追及は予定していないとした。

永井氏は、ケリー被告について「逮捕され、ヒアリングできなかった」が、意図的に関係部署に知らせないなどの不正をうかがわせるメールが残っていたと指摘。一方、西川社長は意図的に隠すような指示メールがなかったと説明した。西川社長はSARで不正にかさ上げされた分の報酬を返納する意思をすでに表明している。SARによる報酬制度は2020年度に廃止する方針。

*内容を追加しました

(白木真紀、田実直美 編集:平田紀之)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20190917issue_cover200.jpg
※9月17日号(9月10日発売)は、「顔認証の最前線」特集。生活を安全で便利にする新ツールか、独裁政権の道具か――。日常生活からビジネス、安全保障まで、日本人が知らない顔認証技術のメリットとリスクを徹底レポート。顔認証の最先端を行く中国の語られざる側面も明かす。



ニューズウィーク日本版 ハーバードが学ぶ日本企業
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月30日号(9月24日発売)は「ハーバードが学ぶ日本企業」特集。トヨタ、楽天、総合商社、虎屋……名門経営大学院が日本企業を重視する理由

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、新たなデジタルユーロ実証実験を来年実施

ワールド

英、デジタル身分証導入へ 就職時の本人確認などに利

ビジネス

ロシュ、対米投資と新施設建設をアピール トランプ関

ビジネス

日本生命が学研と資本業務提携 9億円出資、介護・保
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性を襲った突然の不調、抹茶に含まれる「危険な成分」とは?
  • 2
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 5
    クールジャパン戦略は破綻したのか
  • 6
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 7
    【クイズ】ハーバード大学ではない...アメリカの「大…
  • 8
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 9
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 10
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中