最新記事

訪日外国人

インバウンド消費拡大のカギを握るMICEとは

2019年8月6日(火)11時10分
藤原 光汰(ニッセイ基礎研究所)

MICE関連で日本を訪れる外国人の消費額はその他の場合と比べて大きく、オリンピック終了後に頭打ちとなるインバウンド観光の代替策として期待されている GermanS62-iStock

<訪日外国人の数は順調に伸びているが、一人当たりの消費額は中国人の爆買いや円安効果が消えて伸び悩んでいる。一人当たりの消費額が多いビジネス客を一度に大勢呼び込む国際会議や展示会(MICE)市場のテコ入れが、インバウンド消費増加のカギになる>

1──インバウンドの動向

日本を訪れる外国人の数は年々増加している。日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の訪日外国人数は前年比8.7%増の3,119万人となった。2017年まで6年連続の2桁増が続いていたため、伸び率は鈍化したものの、3,000万人を初めて突破し、アベノミクス開始前の2012年から6年間で約3.7倍に増加した。

政府は、2013年に発表した日本再興戦略において、2030年に訪日外国人数を3,000万人、訪日外国人消費額を4.7兆円に引き上げるという目標を掲げていた。2014年に、2020年の訪日外国人数を2,000万人にするとの目標を追記したが、2015年に訪日外国人数が1,974万人となり、2020年の目標の早期前倒し達成が確実となったことを受けて、2016年の日本再興戦略において2020年に4,000万人、2030年に6,000万人に目標が更新された。加えて、訪日外国人消費額は2020年に8兆円、2030年に15兆円と目標が引き上げられた。

2018年の実績をもとに、政府の目標数値に到達するためには年間で何%の増加が必要とされるのか試算した(図表1)。

nissei190802_1.jpg

訪日外国人数について、近年はやや伸び悩んでいるものの、東京オリンピックが開催されることを考慮すれば、2020年の目標達成は十分に可能性があると考えられる。一方で、訪日外国人消費額は、目標への伸び率と直近3年間の年間増加率の平均との乖離が大きく、2020年および2030年ともに達成に向けたハードルが高くなっている。

nissei190802_2.jpg

訪日外国人消費額の目標達成が厳しくなっている原因として、訪日外国人一人当たりの消費額の伸び悩みがあげられる1。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、一人当たりの消費額は2012年から2015年にかけて大幅に増加したが、中国人観光客の爆買いおよび円安の一巡によって頭打ちとなっている(図表2)。訪日外国人数は増加傾向が続いているが、一人当たりの消費額が伸びていないため、全体の消費額は伸び悩んでいる。

訪日外国人消費額は「一人当たりの消費額×訪日外国人数」で表される。2020年、2030年の訪日外国人数が政府目標を実現したと仮定したとき、訪日外国人消費額の目標を達成するためには、一人当たりの消費額を2018年の15.3万円から2020年に20万円、2030年に25万円に引き上げる必要がある。

――――――――
1 2018年の訪日外国人一人当たりの消費額は15.3万円である

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:屋台販売で稼ぐ中国の高級ホテル、デフレ下

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中