最新記事

日本企業

日産・西川社長・CEO続投は取締役の意志確認せず? 深まるルノーとの溝

2019年5月20日(月)15時15分

5月20日、日産自動車が17日に公表した新経営体制では、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)の続投が決まった。しかし、ここにいたるまでには多くの曲折があったもようだ。写真は日産自動車のロゴ。ジュネーブで3月に撮影(2019年 ロイター/Pierre Albouy)

日産自動車が17日に公表した新経営体制では、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)の続投が決まった。しかし、ここにいたるまでには多くの曲折があったもようだ。経営統合に否定的な西川社長のトップ交代を求めていた仏ルノーと日産の間の溝は、さらに深まった可能性がある。

「全会一致」で西川社長続投

ルノーに対する、すげない拒絶――。「西川社長続投」という日産側の出した方針について、日産・ルノー両社の関係者らはこう受け止めている。

ルノー側からみれば、なんとも「不条理」(ルノー関係者)な結果で、不満がくすぶっている。日産に配慮した友好的な経営統合案を持ちかけているにもかかわらず、統合に反対している西川社長がトップに居座り続ける決定を日産が下したからだ。

一方、日産側としては「ルノーには経営統合を拒む日産の意思表示と受け止めてもらって構わない」(日産幹部)と強気な姿勢だ。

取締役候補の選出を含む今回の人事案は「暫定指名・報酬諮問委員会」が検討を重ね、17日に発表された。

西川社長続投を巡っては、委員長を務めた社外取締役の井原慶子氏が同日、報道陣に対して議論の経緯を説明した。

カルロス・ゴーン前会長の不正の看過、完成検査不正、業績不振に対する西川社長の責任を問う声があったものの議論を尽くした結果、経営の安定性・継続性を考慮し、最終的に取締役会で「全会一致」で決まったと説明した。

しかし、すでに日産取締役に就いているルノーのジャンドミニク・スナール会長に近い関係筋は、全会一致という言葉に眉をひそめる。

全会一致であろうとなかろうと、西川社長の続投の是非を問う「投票」はなかったと話し、結論を導く過程で取締役一人ひとりの明確な意思確認がなされていない可能性をうかがわせた。

日産とルノーから2人ずつ、社外取締役7人

新たな取締役候補は11人。日産からは西川社長、16日付で最高執行責任者(COO)に就いた山内康裕氏、2014年から監査役を務める元みずほ信託銀行副社長の永井素夫氏の3人。

一方、ルノーからはスナール会長に加え、ティエリー・ボロレCEOという経営トップ2人が顔をそろえる。

日産とルノー両社の提携に関するルールを定めた協定の中には「日産の取締役は日産出身者をルノー出身者より1人多くする」という取り決めがあるが、社外取締役扱いの永井氏を除けば、両社から2人ずつとなる。

井原氏によれば、ボロレCEOについて、ルノーから「アライアンス強化」を理由に推薦があった。取締役候補の1人、日本ミシュランタイヤ会長で前在日フランス商工会議所会頭のベルナール・デルマス氏もルノーからの推薦で、日本への理解が深いことなどが評価されているという。同氏はスナール会長と同じミシュラングループの出身だ。

井原氏は、ボロレ、デルマス両氏の選出にあたっては「利益相反がないか、日産の自律性が阻害されないか、企業価値の毀損はないか」などを十分に検討して問題ないと判断したと説明した。

別の日産幹部は「ボロレ氏の『入閣』が決まるまでには、かなり時間がかかった」と話している。「事業面での連携は今でもそれなりにやっているのに、なぜ経営統合という形にこだわるのか」と首をかしげ、デルマス氏の考えは推し量れないが、ルノーとルノーに15%出資するフランス政府の意向が「日産の経営にも色濃く出るのでは」と警戒を強める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テロ対策トップ辞任、イラン戦争支持できず 「切迫

ワールド

イラン外相「ホルムズ混乱は米・イスラエルの攻撃と不

ワールド

米経済、イラン情勢の打撃なし 海峡通航徐々に再開と

ワールド

EXCLUSIVE-イラン新最高指導者、米との緊張
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    生徒がいない間に...中学教師、教室でしていた「気持…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中