最新記事

メディア

転換期を迎えるラジオ 広告収入低迷にコスト増の民放、地域密着で活路

2019年3月28日(木)06時00分

3月27日、ラジオが岐路に立っている。写真は1955年製のソニー初のトランジスターラジオ。東京のソニー資料館で2012年2月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

ラジオが岐路に立っている。スマートフォンの普及などメディア環境が多様化する中で、主な収益源である広告費が低迷。既存設備を維持・更新するコストの増加にも直面し、明るい展望が描けない。北海道ではコミュニティFMと連携し、経営資源を相互に活用する新たな取り組みが始まった。新たなビジネスモデルを模索する動きが続いている。

差がなくなるAMとFM

「ラジオは寄り添いのメディアと言われている。テレビは『お茶の間の皆様』だが、ラジオは『ラジオの前のあなた』。一人称で問いかけるメディアはラジオしかない」──。

コミュニティメディア論などを専門とする大正大学地域創生学部の北郷裕美教授はこう述べ、リスナーがつながりを感じやすいラジオには「将来性がある」との見方を示した。

一般的にFMは音質の良さから音楽番組、AMはトーク番組に向いていると言われているが、インターネットの普及で状況は変わりつつある。音楽配信アプリで気軽に音楽が楽しめるようになった現在は、FMも音楽だけで勝負する時代は終わった。

さらにAM放送は、難聴対策や災害対策を目的にFM波でも同じ番組を放送しており(ワイドFM)、今や両者の差はほとんどない。AM、FMともにあらためて「番組力」が問われる時代になった。

27日に開かれた放送事業の基盤強化に向けた有識者会議で、ローカルファースト研究所の関幸子代表は「FM局、AM局の制度を維持するという視点ではなく、消費者に対してラジオをどのように継続できるのか、という視点で判断する時期に来ている」と語った。

民放連研究所の調査によると、昨年9月に発生した北海道胆振東部地震で最も役立った情報源は、ラジオだった。1991年度のピーク時に2040億円あったAM局の営業収入は2017年度に797億円まで減少した。この26年で約6割減った計算だ。

ラジオ局の自助努力もさることながら、災害時に国民のライフラインにもなるラジオをどう維持していくか、制度面でも考える時期に来ている。

民放連は27日の会議で、AM放送を設備の維持コストが安いFM放送に乗り換えることができるよう、総務省に制度改正を要望した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な

ワールド

インド4月自動車販売、大手4社まだら模様 景気減速

ワールド

米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も

ワールド

アングル:米とウクライナの資源協定、収益化は10年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中