マネックス松本大社長「市場活性化には個人投資家の『アクティビスト』化が必要」
──マネックス証券は今年で創業20年周年となる。個人投資家にどのような変化を感じるか。
「オンライン証券の登場によって、プロと似たような環境で売買できるようになり、個人投資家の裾野が広がった。投資リテラシーも上がり、個人と機関投資家の差が小さくなってきた。一方、インデックス(指数)取引が広がり、日本の個人にも、個別株ではなく日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETF(上場投資信託)などをトレーディングする人が増えてきた」
「資本市場にとってインデックス取引は1つのすばらしい発明だったが、それが行き過ぎると、個別企業の価値をみる、考えるということに対するエネルギーが減る。資本市場と投資家の関係という意味では、退化、後退したと思っている。これは日本だけでなく世界的な問題であり、機関投資家を含めた投資家全員の問題として考えていかなければならないテーマだ」
「インデックス化の進展と、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)が重要になってきたことには関係がある。インデックス投資家は個別株を選べないので、議決権行使やエンゲージメントによって保有株の価値を上げたり、価値が下がるのを防いだりする。その時にESGなどの尺度で測って意見を述べる。投資コストが下がるとか、ESGやSDGsといった概念が世界に広がっていくとかプラスの面も多かったが、行き過ぎると価格発見機能がなくなるなど弊害も出てくる」
──これからの株式投資のあるべき姿は。
「日本の証券会社として社会に貢献できるのは、1つの切り口で言うと、日本企業のPER(株価収益率)を引き上げ、国際競争力を高めることだと考えている。近年のインデックス取引の広がりで、個人が個別の企業価値を見極めることにエネルギーを使う時間が減った。個人投資家が主体的に企業価値を高める働きかけができるようにすることも、証券会社の重要なミッションだ」
「具体的には、個人投資家が企業にモノを言えるようにしたい。『個人投資家もアクティビストになろう』と言っている。実際、アクティビストで著名なブーン・ピケンズの生涯リターンは、ウォーレン・バフェットよりいいと言われている。個人投資家もリターンが上がる可能性が高まるとなれば、企業のことをよく研究するようになる。企業のことが分かると、さらに(株を)買えるようになり、マーケット全体のPERを上げることにつながり得る」