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「M&Aも優れた経営者も不要」創業100年TOTOが成長し続ける理由

2018年1月12日(金)18時22分
杉本りうこ(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

同業買収をやらない理由とは?

――社長が超長期的な視点に立って行動すれば、社員もうまずたゆまず頑張る?

間違いなくそうだと思う。そしてファンを作るというのは本来的に、そういう作業じゃないですか。社員もTOTOファン。もちろんお客さんにもTOTOをずっと好きでいてほしい。こういう社内外のファンを大事にすることは、1代の社長で終わる営みではありません。

うちの商品は毎年買い換えるものではありません。新しい機能が付いたからとか、ブームだからとか、短期的な視点で買われるものでもありません。長年使った後に「次もTOTO」と言ってもらえるかどうか。わが社にとって商品は売って終わりではなく、売ってから後にこそ試されるのです。10年後、20年後まで高い品質とサービスを担保し続けなければなりません。

この考え方が、うちが企業買収をやってこなかったことにも通底しています。

――競合企業と比べると、本当にやりませんね。

「同業を買収して傘下にブランドを増やせば、売り上げと利益が増える」と言う投資家もいます。でも僕はそう言われるたびに、「それは誰のため? 誰が喜ぶの?」って聞くんです。お客さんは、年商1兆円の会社だから商品を買う、数百億円だったら買わないって判断しますか? 違いますよね。商品がいいかどうかでしょう。だったらTOTOは、いい商品を作ることを一番大事にしたい。

TOTOと同じように、お客さんと商品を一番大事にする会社が「一緒になりたい」と言ってくれるなら、喜んで一緒になります。でも残念ながら、そういう会社は絶対に売りに出ません。

――いい会社はマーケットに出ない。

絶対出ませんね。正直にいうと、一緒になれたらいいなあ、と思う会社がないわけではありません。うちと似た文化の会社は、実は世の中にたくさんありますから。でもそういうところはどうやっても買えない。

逆に売りに出ている会社には必ず、何らかの理由があります。なぜ売りに出たのか、それが一番肝心なのです。投資銀行など買収案件を持ち込む側はみんないい話しかしません。「後継者がいないので」と説明されることもありますが、「何を言っとんねん、育てればええやん」とこちらは思うわけです。

だから僕らは、「なぜこの会社は売りに出ているのか?」を納得がいくまで調べます。特に海外の会社なんかは実態がわかりにくいから、いろんな機関を使って徹底的に調査します。工場を見て、社員の雰囲気を確かめます。そうすると結果的に、買わないという結論になるのです。

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