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米国アパレルで閉店・倒産の嵐、生き残る3つの「新カテゴリー」

2017年9月15日(金)16時15分
山田敏夫(ファクトリエ代表)※東洋経済オンラインより転載

それでは、ファッションにこだわりを持っているお客さんたちはどこへ流れているのでしょう。私が今年7月にアメリカに滞在した際、支持されるブランドには「ソーシャル」「アスレジャー」「クラフトマンシップ」の3つのカテゴリーがキーワードとしてあることを肌で感じました。

まず「ソーシャル」から見ていきましょう。この消費のポイントは「自分の購買行動が社会にどのような影響を与えるのか」という点で、フェアトレード、オーガニック、エシカルなどのトピックスに関心を持ちます。金銭的に余裕のある層だけでなく、ミレニアム世代にもその傾向が強いように思いました。

NY5番街に洋服の山を展示

ソーシャルの一例となるのが、ラグジュアリーブランド「ヴェトモン(VETEMENTS)」のあるキャンペーンです。アパレル業界の過剰生産に対する問題提起として、ニューヨークの5番街にあるサックス・フィフス・アベニューのウィンドーに洋服の山を展示しました。洋服の山は、百貨店の在庫や従業員の古着で構成されており、「ヴェトモン」の公式インスタグラムでは、「アメリカで売れ残っている洋服の在庫は、年間500億ドル(約5兆円)に達する。過剰生産を防ぐことこそが、サステイナビリティや二酸化炭素排出量の削減につながる最もシンプルな解決方法だ」と、その狙いを語っています。

デザイナーズブランド、「ステラ マッカートニー(Stella McCartney)」のノーファー宣言や、急成長するメガネブランド「ワービー・パーカー(Warby Parker)」が掲げる「1つメガネを買えば、途上国に1つメガネが寄付される」という仕組みも、ソーシャルというキーワードに当てはまる例と言えるでしょう。

ソーシャルなブランドの支持層は、多くがデジタルネイティブ世代。マスメディアで流れないファストファッションの裏側にある事情も、日々触れるデバイスの中からごく当たり前に情報収集しています。

次に「アスレジャー」について見ていきましょう。数年前から流行り始めたアスレジャーという言葉は、アスレチック(運動競技)とレジャー(余暇)を組み合わせた造語で、機能的なウエアを中心とした動きやすいコーディネートが特徴。健康志向が高まっている中、素材や機能にこだわったアイテムでトレーニングやスポーツ、ヨガといったワークアウトの時間を楽しみたいという人たちが増えているのです。

注目ブランドの一つ、2017年創業の「ミニストリー(Ministry)」は、ドレスウエアにおいても消臭や吸湿速乾、通気などの機能性を追求しており、ついには宇宙服に使われている体温調節素材まで取り入れてしまうほど。こういった技術力の高さも、アメリカの人たちの心をしっかりとつかんでいます。

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