最新記事

情報セキュリティ―

口の軽いスマート人形にくれぐれもご用心

スマート機器の製造現場にはセキュリティー対策を組み込む発想がほとんどない

2015年12月11日(金)17時00分
ダン・ギルモア(コラムニスト)

危ないスマート機器 マテル社のハロー・バービーを通して個人情報が盗まれるかも(写真は店頭に並ぶ通常のバービー人形) Mike Blake-REUTERS

 プレゼント選びのこの時期に1つ助言したい。ネットに接続された玩具は避けるように。その玩具が、個人情報をハッカーに漏らす恐れがあるからだ。

 香港の玩具メーカー、Vテックがサイバー攻撃を受け、写真やチャットなど子供や家族の情報が大量に流出したばかり。米マテル社のWi-Fi(ワイファイ)接続するスマート人形「ハロー・バービー」はサイバー攻撃に弱く、ハッカーが自宅のネットワークや機器に侵入する入り口になる危険がある。

 最近のインターネットの悲惨なセキュリティー状況を考えれば、ネットに接続されている物は一切買わないことが望ましい。だが現代社会に生きている限り、それは無理というものだ。

 そこで次善の策として考えられるのは、Wi-Fiやブルートゥースが搭載された物のうち買っていい機器を、パソコン、スマートフォン、電子書籍リーダー、ルーター、メディアストリーミング端末だけに限定することだ。

 今やモノのインターネット(Internet of Things/IoT)の時代が到来し、生活のあらゆる場面にハッカーの魔の手が伸びるようになった。だが対策はなおざりにされてきた。

 通信機器業界ではようやく、心ある企業が対策に本腰を入れ始めた。だが玩具メーカーに、デジタルセキュリティーを過度に期待するのはお門違いだろう。

 事態のあまりの深刻さに、米政府――自らのセキュリティー対策も怪しいが――が重い腰を上げた。国土安全保障省は今月、IoTの危険を減らす計画の一環としてシリコンバレーで会合を開き、IT企業から意見を募ることになっている。

 そもそもどうして、何でもかんでもネットにつなげる必要があるのだろう。だってつなげられるから、が答えだろう。

 確かに「スマート」機器はいろいろなことを可能にしてくれる。農作業の効率化もできれば、外出先から自宅の電気や暖房のスイッチを入れることもできる。だが製造現場では、セキュリティー対策を設計段階から組み込む発想がほとんどないようだ。

 メーカーは当てにならず、IoTの前進は止められない。となれば、持ち主を監視するような「スマート・テレビ」は買わないよう自衛に努めるしかない。

© 2015, Slate

[2015年12月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正

ワールド

米国、コロンビア大統領に制裁 麻薬対策せずと非難

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 6
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 7
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 8
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中