最新記事

中国経済

レアメタル商品の換金不能問題に見る中国の金融リスク

8万人が57億ドルを投資した“ノーリスク・2桁の高利回り”商品が元本償還できない事態に──

2015年10月9日(金)18時05分

10月9日、レアメタル商品の換金不能問題は、中国の金融リスク浮き彫りにする。写真は香港にある外貨両替所m2014年10月撮影(2015年 ロイター/Bobby Yip )

中国のレアメタル(希少金属)取引所が提供した「ノーリスク・2桁の高利回り」商品が引き起こしている換金不能問題は、中国の複雑な金融システムにリスクが潜んでいることを如実に示した。

雲南省の泛亜非鉄金属取引所は7月、金融商品「日金宝」の元本償還ができなくなったと発表。国営テレビで宣伝を流していたため、政府の支援があったと思い込んだ投資家が抗議活動を北京や上海で繰り広げ、中国政府を悩ませている。

中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の上海オフィス前で抗議活動に加わっていたワン氏と名乗るある男性(35)は、日金宝に50万元(7万9000ドル)を投資した。「われわれは政府にこの問題に対処してほしいだけだ」と説明した上で、「中国指導部は『中国の夢』を成し遂げると話しているが、われわれの基本的な権利、財産権も守れないなんて」と憤る。

泛亜非鉄金属取引所にコメントを求めたが、回答は得られなかった。同取引所はこれまでに、日金宝に関与した投資家は8万人で、投資総額は360億元(57億ドル)に上ると明らかにしている。

多くの投資家は地元政府の当局者や主要な商業銀行の支援があると思ったことが投資理由だと話す。

上海の投資家男性は「国営テレビで2014年に1カ月にわたってCMが流れていた」と指摘。別のファン氏と名乗る男性は「われわれが失ったのはお金だけではなく、地元政府への信頼だ」と付け加えた。

泛亜非鉄金属取引所は、政府の支援を受け、政府の監督を受けていると説明していた。ウェブサイトではさらに、国家統計局の「協力企業」と記載するなど、政府の支援を受けている事例を列挙している。

雲南省の当局に提出した異議申立書は8月に却下された。訴訟を起こしてもお金を取り戻したり、受け付けてもらえたりする可能性は低い。

そのため、メディア報道によると、投資家らは8月、泛亜非鉄金属取引所の董事長を上海のホテルで捕まえ、警察に突き出したという。董事長はその後、釈放された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:業界再編主導へ、「どう統合起こすか常

ビジネス

バフェット氏、傘下鉄道会社BNSFによるCSX買収

ワールド

トランプ米大統領、シカゴに部隊派遣の可能性否定せず

ワールド

トランプ氏、韓国大統領と会談 金正恩氏と年内会談望
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中