特別リポート:「スバル」快走の陰で軽視される外国人労働者

2015年7月29日(水)12時51分

常に入国管理局の監視下にあり、ひっそり暮らしてきたと同氏は話す。だが、仮放免されている難民申請者は、帰国もできず、働く事もできないという事実上、身動きが取れない状況にある。

「私には働く権利も保険もない。正式な住所もなく銀行口座もない。日本政府にとって私は存在しないのと同じだ」。

「日本にいなくてはならないし、そのためには食べ物を買う金が必要だ」。他のバングラデッシュ人と同居しているシェク氏は言う。「私が欲しいのは人間としての待遇だ。犬扱いじゃない」。

これに対し、富士重工は不法移民を雇っておらず、下請けメーカーでもそうした作業員は確認できないとしている。太田市の下請けメーカーはトヨタ<7203.T>や日産<7201.T>、ホンダ<7267.T>など他の自動車大手にも部品を供給している。トヨタも日産も難民申請者を雇っていないと述べたが、下請けメーカーによる難民申請者の雇用についてはコメントしなかった。日産は約50人の技能実習生を雇っていると答えた。ホンダはコメントを拒否した。

外国人なしでは車ができない

米国で人気を博すスバル車の成功は、安倍晋三政権が進めるアベノミクス経済政策のモデルケースだ。円安の追い風を受け、スバルの米国内販売シェアはBMWやメルセデスを抜き去った。富士重工の株価は2012年末の時点から4倍も上昇。ロイターが計算したところ、フォレスターは単独で年間36億ドルを売り上げる輸出マシンとなった。

フォレスター人気のおかげで、富士重工は営業利益率で日本の自動車メーカーのトップに立った。また安倍首相の経済政策により、輸出企業が円安の恩恵を受けて利益を伸ばす顕著な例となった。

規模の大きい競合他社とは違い、富士重工は海外で販売する自動車の約80%を日本で製造している。このメード・イン・ジャパンを貫く姿勢が、同社や約260社の下請けメーカーの多くが太田市の工場群で部品需要を満たすのに困難をきたす原因となっている。

太田市の清水聖義市長は「外国人がやらないと、現実に、車は部品から何から絶対できない」と指摘。市長は過去、同市を外国人労働者特区に指定するよう申請活動をしてきたが、実を結んでいない。

清水市長はインタビューで、ロイターが把握している移民労働者の過酷な実態について認識していないとした。ただ、派遣業者が労働者を国の社会保険に加入させないと、市が支払う生活保護など福祉手当の財政負担が増えかねないとの懸念を示した。

政府は2010年、難民資格の希望者に対し、認定申請書を処理する間、6カ月更新の就労許可を与えることを決めた。それ以来、申請件数は4倍に跳ね上がり、昨年は5000件を記録した。ネパール、トルコ、スリランカの出身者が特に目立つ。しかし過去4年間の承認件数は毎年20数件にも満たない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者、顔と足の負傷回復途上 主要問題の

ワールド

アングル:「オルバン長期政権後」に賭ける投資家、ハ

ワールド

中国がイランに防空ミサイル、供与を準備とCNN報道

ワールド

米とイランの交渉団がパキスタン入り、レバノン停戦な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中