最新記事

経営戦略

日本企業は昔のパンパースと同じ間違いを犯している

2013年1月22日(火)16時40分
千葉香代子(本誌記者)

──それは、あなたもP&Gで務めたグローバル・マーケティング責任者とかCMO(最高マーケティング責任者)のことか。

 マーケティング部門の責任者は必ず必要だ。多くの日本企業はマーケティングを財務や技術開発のような専門として見ていな い。販売促進活動の一環のように思っている。それが問題だ。販売が目指すのは、今日、明日、来月などの短期でたくさん売り上げること。マーケティングは長期的に需要を創造するもの。製品開発を根本から変えるようなもの。マーケティングは消費者を理解し、企業に長期的な勝利をもたらすものだ。

── 具体的には?

  企業のビジネスの背景にある理想を定義づけ、それを広く全社員と分かち合い、一丸となってその理想を追い求め、各部署で理想を具体化するための行動に落とし込む。これがマーケティングで、この一連のプロセスを完結させるにはリーダーがいなければならないし、強力なマーケティング部隊がなければ実現は難しいだろう。

 とはいえ、誤解しないでもらいたい。これはマーケティングについての本ではない。企業の哲学、成長へのアプローチに関する本、企業を率いるリーダーすべてにとっての本だ。私はP&Gにいた25年のうち18年間はマーケティング以外のさまざまな仕事をしていた。この本はいかにして持続的な成長を可能にするかについてのものだ。

──急速に成長を遂げるビジネスを動かしているのは「ビジネス・アーティスト」だとあなたは言う。ビジネス・アーティストとは何か。

 成長ブランドの創造には人々を感動させ魅了するブランド理念が欠かせないが、それはビジネスマンよりアーティストの仕事だ。フランスの高級ブランド企業、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)のベルナール・アルノーCEO兼会長はこう言っている。「スター・ブランドは、芸術的で創造的な精神からしか生まれない」

 実際、偉大な製品、勢いのある組織、消費者ニーズのいち早い発掘、差別化の上手さなどで優れた企業を思い起こせば、必ずそこにはビジネス・アーティストがいる。スティー ブ・ジョブズはもちろん、その最たる例だ。彼の場合、ビジネス運営面はCOO(最高執行責任者)だったティム・クックが担っていた。一人で二役を兼ねられるリーダーもいるが、別々でもとにかく権限をもつアーティストがいることが重要だ。LVMHのアルノーは、傘下の企業のすべてで、ビジネス運営者の役割とアーティストの役割を別々の人物に任せている。

 成長しない会社というのは戦術やオペレーションのことばかり考えていて、ビジネスの創造的で芸術的な側面のことをやっていない。脳の片側、論理面しか使っていないCEOが多い。そしてもう片方の感性面には苦手意識をもっている。だが組織を率いるリーダーは本来、感情的に成熟していなければならない。

 そういうリーダーが少なすぎる。ビジネススクールはビジネス運営者ばかりを量産しているが、もっとアーティストが必要だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏が閣僚刷新検討 イラン戦争が打撃 選挙控

ワールド

商船三井のLPG船がホルムズ海峡を通過 日本関係2

ワールド

ドバイの米オラクル施設に迎撃破片が落下、負傷者なし

ワールド

トランプ政権による大学への人種データ開示命令を仮差
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 10
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中