最新記事

エアライン

乗ってはいけないアメリカン航空

経営再建中のアメリカン航空の地域会社で「乗務員のケンカでフライトが4時間遅れ」の不祥事が発生。安全運航どころじゃない?

2012年9月21日(金)17時30分
ケイトリン・フナロ

悪循環 かつて世界最大手だったアメリカン航空も今は客離れがひどい Frank Polich-Reuters

 アメリカンイーグル航空のフライトでとんでもない不祥事が起きた。9月19日、ニューヨークのケネディ国際空港の滑走路を走り出した飛行機の中で、客室乗務員同士のけんかが勃発。パイロットは搭乗ゲートまで戻り、わずか1時間のフライトの間、仲たがいせず仕事に専念できる乗務員を探す羽目になった。

 乗客がニューヨーク・デイリー・ニューズ紙に語ったところでは、問題のけんかは、15時発のワシントン行きの便が搭乗ゲートを離れた時に起きた。

 きっかけは、ある客室乗務員が携帯電話を切らなかったことだという。別の乗務員が「フライト中は、全員が電話や電子機器などの電源を切らなければなりません。乗務員も例外ではありません」とアナウンスしたにもかかわらず、だ。

 目撃した人々がNBCに語ったところでは、アナウンスの直後、一方の乗務員がもう一人の乗務員がまったく協力してくれないと非難した。口論がかなり激しくなったので、パイロットは飛行機を方向転換させて引き返した。

「乗務員が協力して働くことができないので搭乗ゲートに戻ります、とのお知らせがあった」と、乗客のダン・アレクサンダーはNBCニューヨークに語った。「1時間程度のフライトで、乗務員が仲良くできないなんて、とても信じられない」。結局、代わりの乗務員を手配するまで乗客は4時間も待たされた。

 経営の苦しいアメリカンイーグル航空にとって、悪評がたつのは大きな打撃だ。同社はアメリカン航空の地域運行会社だが、ちょうど事件前日の19日、ウォール・ストリート・ジャーナルに航空コラムニストのスコット・マッカートニーが「アメリカン航空は信頼できないから乗るべきではない」との記事を書いていた。

 アメリカン航空は昨年11月、連邦破産法第11条の適用を申請して破綻した。経営再建のため給与削減やフライトの外部委託を増やし、パイロットの雇用条件を切り下げたりして、従業員から激しい反発を食っている最中。出勤日に仮病で休んだり、機体の些細な不調を理由に離陸しないなどのサボタージュもあるようだ(労働組合は否定)。

 17日の運行状況をみると、予定通りに到着した便は39%、到着予定を45分以上も過ぎるという著しい遅れが出た便は29%に上った。フライトキャンセル率は5.8%。USエアウェイズやデルタ航空はおろか、格安航空のジェットブルーなどと比べても落ちる数字だ。

 こうした混乱の巻き添えをくった乗客は大事な会議に遅れたり、旅行の計画が狂ったり大きな損害を被る。そのせいで客が離れていけば、社員も自らの首を絞めることになるのだが。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中