最新記事

新市場

ビルマにコカ・コーラ正規参入の意義

経済制裁の緩和を受けてコカ・コーラ社が60年ぶりにビルマでの事業再開を発表。しかし実は以前から多くのアメリカ製品が裏ルートで市場に流入していた

2012年6月25日(月)18時14分
パトリック・ウィン

フレッシュな風? コーラのビルマ進出は民主化の証しか Jim Young-Reuters

 民主化が進むビルマ(ミャンマー)で、60年ぶりに事業を再開する----先ごろ、そう発表したのがアメリカの飲料最大手コカ・コーラ。ベルリンの壁崩壊後のドイツや、アメリカと国交正常化した後のベトナムでそうだったように、ビルマでも「フレッシュな」風を吹かせてみせる----同社はプレスリリースの中でそう謳い上げた。

 米政府は長年、自国企業がビルマと経済活動を行うことを禁じてきた。既に世界の隅々まで事業を展開しているコカ・コーラも、キューバ、北朝鮮、そしてビルマには進出していなかった。

 しかし、ビルマ国民がコカ・コーラの味を知らずに暮らしてきたかというと、そういうわけでもなさそうだ。コカ・コーラを始めとするアメリカの商品は長年、規制の抜け道をかいくぐってビルマ市場に入り、店頭に並べられてきた。

 その仕組みはいたってシンプル。ビルマのバイヤーが、周辺国で過剰生産されているライセンス製品を買い上げる。それをビルマに持ち帰り、価格を吊り上げて販売するというわけだ。アメリカの対ビルマ制裁が緩和されつつある今も、こうした裏ルートの輸入販売は続いている。

バドワイザーの値段はアメリカの倍以上

 筆者は先ごろ、ビルマ最大の都市ラングーン(ヤンゴン)を訪れた際に、「メイド・イン・アメリカ」の代表的な商品を探すため小売店を訪れた。

 まず最初に見つかったのがコカ・コーラ。タイで生産されたものが1缶55セントで売られていた。同社製品のスプライトもあったが、こちらはシンガポール産だった。

 次に目に止まったのが、クラフトフーズ社の粉末飲料「Tang」だ。値段は400グラム入りで1.6ドル。1つ隣の通路には、P&G社のシャンプーとハインツ社のマヨネーズが置かれていた(どちらもタイ産)。

 一方、ビールのバドワイザーはタイでもシンガポールでもなく、米ミズーリ州セントルイスで生産されていた。カンボジアの卸売業者を通じてアメリカから輸入されているという。

 制裁をかいくぐっての輸入販売はやはり割高だ。アメリカでは1瓶(360ミリリットル)1ドル程度のバドワイザーが、2.3ドルになっていた。

 経済制裁の緩和によってアメリカ製品が正規ルートで入ってくるようになれば、値段が下がるのは必須。ビルマ国民にとって、うれしいニュースであるのは間違いない。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀短観、景気は緩やかに回復との政府認識と齟齬ない

ビジネス

中国11月鉱工業生産・小売売上高は減速、予想も下回

ビジネス

日銀短観、大企業・製造業DIは4年ぶり高水準 利上

ビジネス

中国万科、18日に再び債権者会合 社債償還延期拒否
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中