最新記事

米雇用

米経済改善を猛アピールするオバマ

アメリカでのこの半年の雇用改善状況は06年以来最も好調だが、失業率は高止まりしたまま

2012年3月12日(月)17時01分

製造業の復活 ロールスロイスの新設の工場を訪れ、雇用状況が改善したと演説するオバマ(3月9日) Larry Downing-Reuters

 オバマ米大統領にとっては、何よりアピールしがいのある知らせだろう。

 オバマは先週、バージニア州に完成した高級車ロールスロイスの新たな製造工場を訪れ、アメリカの雇用環境は改善に向かっていると演説した。

 米労働省が同日発表した統計によれば、2月のアメリカの就業者数は前月比で22万7000人増加(失業率は1月と同じ8・3%)。この半年間の雇用の状況は、2006年以来最も強い改善傾向にあるという。平均賃金も2月には0.1%上昇し、時給23・28ドルから23・31ドルに上がった。

「アメリカ経済は、日ごとに危機から回復しつつある」と、オバマは1500人の聴衆に向けて語った。バージニアは伝統的に保守層が多く、今年の大統領選のカギを握る激戦州の1つだ。

 再選を目指すオバマは、共和党の政策こそが今の経済危機を招いたと批判した。「私が大統領を目指したのは、この国を後戻りさせるためではない。正しい方向に導くためだ。約束しよう。私たちは必ずその場所にたどり着く」

「製造業重視」を宣言

 報道によれば、過去2年間にアメリカで創出された雇用は400万。だがこの数字は、07年の住宅バブル崩壊から始まった景気低迷後に失われた雇用の半分に過ぎない。国内にはいまだに多くの失業者がいることを認めながらも、オバマは新設されたばかりの工場で聴衆にこう語った。「こういう場所に来れば、われわれが確実に前進していることが見て取れる。未来は明るいと確信できる。」

 製造工場で遊説を行ったことは、オバマのある象徴的な決意を示している。経済回復を目指すなかで、製造業の果たす役割を中心に据えようとしている、ということだ。13年度の予算案では、10億ドルの資金を投入して「全国に製造業のハブ(拠点)を15カ所設置する」こと、さらに「国防総省やエネルギー省、商務省、国立科学財団の基金から計4500万ドルを拠出して、研究と製造機械開発のための先端プログラムにあてる」ことになっている。

 一方、共和党の大統領候補を目指すミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事はオバマの実績を否定してかかる。ミシシッピ州で行った演説では、失業率が依然として高止まりしていることを指摘。「オバマは何も成し遂げてこなかった。失敗したのだ。だからこそ、2012年は彼を大統領の座から追い落とさなければならない」と語った。

 改善の兆しが見えたアメリカ経済も、まだオバマの追い風とまでは言えないようだ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ」が物議...SNSで賛否続出
  • 3
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 8
    高市首相の「台湾有事」発言、経済への本当の影響度.…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    中国人爆買いが転機、今後は「売り手化」のリスク...…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中