最新記事

債務危機

ギリシャ富裕層、カネの逃避先は

ユーロから追放された場合に備え、貯めこんだ財産の価値を守るためのあの手この手

2012年1月12日(木)12時41分
ケン・マグワイア

自衛か略奪か ドラクマを買い叩くためユーロはいったん国外へ John Kolesidis-Reuters

 ギリシャがユーロを捨て、通貨ドラクマに戻る──そんな不安に駆られたギリシャ人は預金の価値の暴落を恐れ、ものすごい勢いでユーロ建て預金を引き出している。過去21カ月、ギリシャではユーロをスイスの銀行口座に送ったり、貸金庫や自宅の金庫にため込む人が増えた。

 特にこの2カ月はそのスピードに拍車が掛かった。先月末に当時のパパンドレウ政権が財政支援受け入れに関する国民投票構想を打ち出したため、ギリシャがユーロ圏から強制退去させられる見通しが高まったからだ。

 国民投票は回避されたが、昨年初めから今年9月までに750億ドルの貯蓄が引き出されたという。これは国の資産が23%減少したことを意味する。

 ドラクマの復活は、国外にユーロやドルの口座や現金を持っている金持ちに莫大な利益をもたらす。その資金で通貨価値の切り下がった後のドラクマを買えば、国内不動産や国産品をタダのような値段で購入できるからだ。

 だがギリシャと欧州の首脳は、断固としてそのシナリオを阻止するつもりだ。パパデモス新首相は、ユーロ圏にとどまることが不可欠だと強調した。「これが政府およびギリシャ国民にとって、前進する唯一の道だ」

[2011年12月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中