最新記事

ソブリン債

債券「格付けインフレ」の真相

格付けは絶対的な信用度ではなく同種の債券の中での相対的安全度なので、意外なほど格付けが高くとどまる場合もある

2011年8月30日(火)14時49分
ジェレミー・シンガーパイン

危機へ秒読み? アメリカの公的債務の累積額を表示する「借金時計」(ニューヨーク) Scott Eells-Bloomberg/Getty Images

 格付け会社ムーディーズは先週、米連邦債務の上限が8月2日までに引き上げられない場合、米国債の格付けを現在の最高ランクAaaから2番目のAaに格下げする可能性があると警告した。

 一方で、財政破綻の瀬戸際に立たされている国々の国債はアイルランドがBa1、ギリシャがCaa1という評価のまま。格付けには「インフレ傾向」があるようだ。

 ムーディーズは企業の信用度評価の草分けで、1909年に最初の債券格付け(Aaa〜Eの13段階)を発表した。24年までにプアーズ、スタンダード(41年に合併してスタンダード&プアーズ〔S&P〕となる)、フィッチも参入し、企業の債券だけでなくソブリン債(国債や政府機関の債券)も格付けの対象となった。

 各機関は独自の基準で格付けを行ったが、30年代後半にはAが「健全な投資対象」、Bが「やや投機的」、Cが「かなり投機的でリスクが高い」という意味合いはほぼ共通するようになった。学校の成績ならBはまずまずかもしれないが、債券としては大いに問題児だった。

 同じ頃に各国政府は投資の判断基準として、BaaやBBB以上の債券と投機的な「ジャンク債」を区別するようになった。当局がアルファベット記号による格付けにお墨付きを与えたことで、今ではほかの方式はほとんど見られなくなった。

 現在、格付け機関はどこも似たような基準(トリプルA〜CかD)を採用し、それぞれ独自の格付けを発表している。格付けは、対象となる投資の絶対的な信用度と言うより、同じ時期の同じ種類の投資の中でどのくらい安全そうかを表す。つまり、信用度を相対的に評価しているのだ。

 昔に比べて高い格付けが出やすいインフレ傾向は強まっているのだろうか。ムーディーズとS&Pは評価基準を緩和してきたとも言える。特に00年代前半は住宅ローン担保証券など複雑な金融派生商品に対し、フィッチと競い合うように基準を緩和して高い格付けを出した。

 しかしあるアナリストは、S&Pは少なくとも社債の格付けにおいて、85年より09年のほうが保守的だと指摘する。例えば85年ならAAAの格付けになったであろう企業が、09年ならAAマイナスしか付けてもらえないという。

[2011年7月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「利下げに前向きと確信」、次期FRB議長

ビジネス

米PPI、12月は前月比0.5%上昇 5カ月ぶりの

ワールド

FRBの利下げ見送りは失策、ウォーシュ氏は議長に適

ワールド

イラン外相「公正なら」米と協議も、防衛問題には難色
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 7
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中