最新記事

欧州経済

今度はイタリアを襲った国家破綻の危機

2011年7月13日(水)18時41分
アレッサンドロ・スペチアーレ

イタリア国債は乱高下

 イタリアにとっては14日が1つの正念場になるだろうと、スピスニは言う。この日、5年ものと10年ものの長期国債の入札が行われる。「投資家は1年もののイタリア国債には手を出すだろうが、長期国債となるとどうだろうか」とスピスニは言う。

 市場の懸念は、トレモンティ経済・財務相にとって追い風になっているようだ。ベルルスコーニが彼を「協調性がない」と批判し、彼の緊縮財政政策が閣僚たちに否決されてからというもの、トレモンティの政権内の立場は揺らいでいた。

 トレモンティの立場をさらに危うくしたのが、あるスキャンダルだ。汚職事件にからみ、トレモンティの側近の1人であるマルコ・ミラネーゼ議員が逮捕状を請求された。法廷の記録によれば、ミラネーゼはトレモンティの暮らすローマ中心部の高級アパートメントのために毎月8500ユーロを支払っていたという。

 12日、トレモンティは野党党首らとの緊急会議を招集。野党党首らは議会での緊縮財政法案の成立を遅らせるつもりはない、と発言している。

 ベルルスコーニはこの会議に出席しなかった。だが代わりに彼は、イタリアが財政均衡化に向けて努力するとした長い声明を発表した。「われわれは共通の利益のもと一致団結して取り組む。当面の努力と犠牲は、長期の安定した利益につながるという認識をもたなければならない」としている。

 ベルルスコーニのこの声明で締めくくられた12日は、目まぐるしく過ぎた。イタリア国債は急落した後に再び上昇したが、ベルルスコーニが介入したから市場が反応した、というわけではない。トレモンティが、イタリア議会の財政政策の行方を見届けるために滞在先のブリュッセルからローマに戻ることを決めた――その一報が市場を動かしたようだ。

 確かに今、ベルルスコーニの影響力は地に落ちている。だがこんな力関係のままでベルルスコーニがいつまでも黙っているとは到底思えない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボ、アルツハイマー病薬試験は「宝くじ」のようなも

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃

ワールド

米民主党議員、環境保護局に排出ガス規制撤廃の中止要

ビジネス

アングル:FRB「完全なギアチェンジ」と市場は見な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中