最新記事

東南アジア

世界のビールを飲み干すベトナム人

年間数十億リットルを消費する世界3位のビール市場ベトナムを、各国ブランドが虎視眈々と狙っている

2011年5月26日(木)18時09分
エミリー・ロディッシュ

巨大市場 地元ブランドも輸入ビールも人々は大好き Nguyen Huy Kham-Reuters

 ベトナム人のほとんどは酔っ払っている。少なくとも、この国のビール消費量と輸入量に関する最新データに基づけば、そう思わざるをえない。

 ベトナム国民は毎年、何十億リットルものビールを飲んでいる。新しいビール醸造所が作られ、既存の醸造所も増産を図っている。市場に出回っているビールのほとんどは国内ブランドか、ベトナムで生産している外国ブランド(シンガポールのタイガービールやデンマークのカールスバーグなど)だが、輸入ビールのシェアも拡大している。

 ホーチミン市の税関当局は地元ニュースサイトに対して、缶入り・瓶入りの蒸留酒類、ビール、ワインの輸入は2009年、166万本に倍増したと話している。同じくオランダのビール会社ハイネケンは、昨年ベトナムで2億リットルのビールを販売したと語る。ハイネケンが販売されている世界170カ国のうちベトナム市場は現在、アメリカ、フランスに次いで3番目の規模。2012年には2番目の市場になると予想され、2015年には世界最大の市場になりそうだ。

水より安い庶民派「ビアホイ」

 アメリカのミラー・ビールは「今こそアメリカの時」というスローガンを掲げて、猛攻をかけている。さらにラオスの「ビアラオ」といった周辺国のブランドも参入してきている。

 人々が思い浮かべる伝統的なイメージとは違うかもしれないが、これが今日のベトナムの姿だ。米ニューヨーク・タイムズに掲載された旅行記事にはこう書かれている。「ベトナムを初めて訪れた旅行客は、地元や東南アジアの多種多様なビールが飲まれていることに驚くだろう。ビア・サイゴン、ビア・ハノイ、ビア・フエなど、都市一つひとつにちなんだビールがあるといっていい。どれが最高かは、どこで誰にたずねるかによって違ってくる」

 しかし、どんなに輸入ビールが市場に氾濫しようと、庶民のためのビール「ビアホイ」を忘れてはならない。これは一杯約16セントという安価な生ビール。保存料が入っておらず、通常はその日に製造されたものを売っている。ボトル1本の水より安いといえば、味のほうは想像が付くだろうが......。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウォルマートが上場先をナスダックに変更、崩れるNY

ワールド

インド、対米通商合意に向け交渉余地 力強い国内経済

ビジネス

米減税・歳出法案、26年上期GDPを0.4%押し上

ワールド

米議会予算局、トランプ関税による財政赤字削減予測を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中