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タブレットPC時代の大いなる不安【後編】

新世代PCはより小さくより携帯しやすく通信も容易になるが、ユーザーとしていやな予感もする

2011年2月17日(木)17時23分
ファーハッド・マンジョー(オンライン雑誌「スレート」のテクノロジー担当コラムニスト)

フロントランナー タブレットの歴史はiPadで始まったが、いつまで主役でいられるか Tobias Schwarz-Reuters

<前半はこちら

 タブレット型端末がパソコンより格安で、より使いやすいのは明らかだろう。だが、iPhoneやiPad的な製品をアップルやグーグル、マイクロソフトなど各社が競って開発するなか、ユーザーはどの機種を選べばいいのだろうか。

 その答えは、IT業界の今後の動向にかかっているようだ。アプリ開発メーカーは今後も、私が買おうとしているタブレット機対応のアプリをつくり続けるだろうか。私が選ぶタブレット機のメーカーは出版社や映画会社と幅広く提携し、十分な数のコンテンツを提供してくれるだろうか。これまで愛用してきたアプリを、他社のタブレット機に移すことは可能だろうか。その会社は音声認識やクラウドストレージのような重要な技術に投資しているだろうか。言い換えれば、私は勝ち組企業の製品を選ぼうとしているのか、それともいずれ敗れ去る運命のマシンを選ぼうとしているのか──。

 こうした先行き不透明感は、プラットフォーム戦争にはつきものだ。私たちは過去にも、ブルーレイかHD-DVDか、VHSかベータマックスかという選択を迫られてきた。

 とはいえ、互換性が重視される近年のPC業界で、こうした判断が必要なシチュエーションはめずらしい。パソコンメーカー各社は互換性のあるハードウエアのおかげで低価格を実現し、アップルでさえ、インテルのCPUのような定番仕様を自社のマックに搭載している。

 ネットの存在も、互換性の広がりに貢献してきた。最近ではすべてのデータやアプリをウェブ上にもつクラウドコンピューティングが広がっており、ネット閲覧用のブラウザさえあれば、ソフトをダウンロードすることなくメールや銀行口座を管理できる。我が家のキッチンにはリナックスOSを搭載したノート型パソコンがあるが、その便利さは数年前まで使っていたウィンドウズOS搭載マシンとまったく変わらない。

互換性のあるタブレット機がアップルを脅かす

 だが、タブレット型端末の世界は事情が違う。グーグルタブレット向けOS「ハニカム」を搭載したモトローラ製の新機種「XOOM」は魅力的だが、私がiPadで愛用しているアプリのハニカム版が発売される保証はない。発売されないのなら、モトローラXOOMに800ドルも支払う理由はない。

 HPのタブレット機「タッチパッド」で、オンラインDVDレンタルサービス「ネットフリックス」を利用できるどうかも未知数だ。もしHPが何とかこうした人気サービスを何とか手に入れたとしても、プログラマーたちはアップル製品こそ最強のプラットフォームだと信じて開発を続けるのではないだろうか。

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